昇進したばかりの職員も退職勧奨を受ける
発端は2016年6月だった。追手門学院の総務室長からすべての専任事務職員に対し、学院幹部による面談と指名研修を行うと通知があった。通知には「新キャンパスでの展開を考えると諸経費の増額が見込まれますが、学校経営を取り巻く厳しい社会状況において、(中略)「求められる職員像」に達していない方には、今後の職のあり方もご検討いただかなければなりません」と書かれていた。
その後、19人に対して指名研修を受講するようメールで通知があった。翌月、指名研修を受ける19人に対し、先行して執行部による面談が実施された。19人は「2017年3月末までにやめていただきたい」と退職勧奨を受ける。追手門学院大学の関係者は、退職勧奨が行われた背景を次のように解説する。
「2019年春に大学の新キャンパスをオープンすることもあり、大学側は人件費を削減し、財政の安定化を進めたかったのでしょう。19人のなかには管理職経験者や、昇進したばかりの人も含まれていました。19人の選定理由について、研修までに説明はありませんでした」
執行部による面談の後、1人は休職し、残る18人が「研修」を受けさせられる。8月22日から5日間の日程で、ブレインアカデミーの講師である西條浩氏による「自律的キャリア形成研修」が行われた。研修には、ブレインアカデミー代表取締役の今井茂氏や、追手門学院の常務理事や総務室長といった学院幹部、人事課長が適宜立ち合い、人事課の職員2人が常に同席していた。
「もう要らんと言われたんだよ、あなた」
18人は大阪市内のビルの一室に集められる。カーテンによって薄暗くされた状態に置かれるなど、異様な雰囲気に参加者は不安になった。すると、開始早々、西條氏から厳しい言葉が発せられた。
「事前に執行部との打ち合わせのなかで再三再四確認しておりますけれども、原則として今回の18名全員が今年度末、来年の3月末の段階で残念ながら学院を退いていただきたい。例外なく、です。18人全員がね」
西條氏は「この研修はお勉強会的な教育研修ではない」と述べて、自らの指示を厳守することや、録音を禁止することなどを命じた。そこから参加者への人格否定が始まる。一人ひとりを全員の前に立たせて、「私の自己改革テーマ」を発表させ、西條氏がフィードバックする形式で進められた。そのフィードバックは苛烈なものだった。
「まるで公開処刑だった」と受講した一人は証言する。元職員は当日体調が悪く、マスクをしていた。すると、「なぜマスクをしているのかわからない」と20分近く立たされ叱責される。さらに、全員の前で「あなたは腐ったミカンなんだよ。あなたのような人がいると組織全体が腐るんだ」と罵倒された。この調子で、初対面の全員に西條氏から厳しい言葉が投げかけられる。
「自分の職業人生の将来そのものに関して駄目出しをされたんですよ」
「その役割、存在感、影響力を全くと言っていいほど発揮していない」
「あなたはもう花が開かない」
「わが組織の中で、残念だけれども、もう要らないんだよ」
「あなたにはもうチャンスはやらない」
「あなたという存在は三月末で、失礼ながら、もう要らないんですと言われているわけですよ」
「賞味期限切れちゃったかな、○○さんは」
「負のオーラを発している」
西條氏の怒鳴り声が響き、水を飲むことも、トイレに行くことも憚られる雰囲気だった。