研修中に教員が太ももを平手で叩かれたことも

この時点では研修後に7人が退職を申し出ていた。請求書には「自律的キャリア形成支援プログラム費用7名分」700万円、「個別キャリア形成コンサルティングサービス費用1名分」50万円が計上され、最終的に講師の交通費や会場費なども含めて、割引などがされた上で約700万円を請求している。追手門学院からは少なくともこの700万円が支払われた可能性はある。

言うまでもないが、私立大学は高額な学費や国の補助金などを得て運営している。元職員は提訴後、改めて疑問を口にした。「教育ではなく、人権を侵害するような研修にお金が支払われることはいいのでしょうか。正常な形に戻ってほしい」

退職強要「研修」を行ったブレインアカデミーとは、どのような会社なのか。

代表取締役の今井茂氏は、米国サンダーバード国際経営大学院卒で、学校法人専門の人事コンサルタントとされている。今井氏はさらに、東京都千代田区内にあるブレインアカデミーが入居するビルに一般社団法人私学労務研究会を設立し、私立学校の経営層向けに「私学の労基署対策」などといったセミナーを開催している。年会費は12万円で、会員は全国100の学校法人に及ぶ。2022年11月現在、私学労務研究会は千代田区内の別の場所に移転し、別の人物が代表理事に就いている。

実は、追手門学院でのブレインアカデミーによる「研修」は、2016年8月が初めてではなかった。同年3月には、中学と高校の校長ら管理職10人を対象に、「当事者意識確立研修」が開かれていた。講師はやはり西條氏で、「あなたの目を見るとやる気を感じられない」などとネガティブな発言を繰り返し、ある教員に対しては「じっとしていなさい!」と平手で太ももを叩いたという。これにも学院幹部が同席していた。

別の学校法人でも“研修”による大量解雇が問題に

翌年の2017年夏には、大学の教員に対しても西條氏による「研修」が行われている。さらに、ブレインアカデミーによる退職強要「研修」は、他の学校法人でも実施されていた。2015年11月、山口県下関市の梅光学院で中学と高校の教員を対象に「研修会」が開かれ、講師を務めたのはやはり西條氏だった。

罵倒や個人攻撃、人格否定を繰り返す手法は同じで、その後も個別カウンセリングなどが行われ、教員11人が辞表を提出した。梅光学院では他にも辞めた教員や、雇い止めされた大学の教員もいて、大量解雇が問題になり、生徒や学生への影響も懸念された。梅光学院には以前追手門学院に在籍した幹部職員がいたことも無関係ではないだろう。

2018年には追手門学院理事長の川原氏と、梅光学院学院長の樋口紀子氏によるセミナーを私学労務研究会が開催している。ブレインアカデミーと私学労務研究会が一体となってビジネスを展開しているかのようだ。