「裁判をきっかけに食い止めたい」
退職強要を受けて追い詰められれば、泣き寝入りせざるを得ないケースのほうが多い。元職員はうつ病に苦しみ、被害から4年が経ってようやく自分の身に起きたことを受け止めることができたと話す。
「同僚にも家族にも相談できないなかで、立ち上がるのに長い時間がかかりました。しかし、あの退職強要は、社会的に批判されないといけないと考えて立ち上がりました。学院には安全配慮義務があったはずです」
原告の職員の一人は、自分たち以外にもブレインアカデミーによる被害者がいることに憤りを感じている。
「ブレインアカデミーがやっていることが法的に許されるのであれば、他の教育機関にも広がっていくのではないでしょうか。他の学校や大学で発生しないように、裁判をきっかけに食い止めたい。それが、私たちが提訴に至った思いです」
原告3人全員の労災が認められた
裁判が続くなか、2022年3月には行政による判断が出た。提訴している3人は、退職強要により精神疾患を発病したことについて労災の認定を請求していた。茨木労働基準監督署は、原告の1人でもある元職員の男性がうつ病になったのは、理事長や常務理事ら学院上部による面談や研修の場において、執拗な退職勧奨が行われたことが原因だとして、男性の労災を認定した。理由として、西條氏が研修で参加者に発した言葉を「退職勧奨とも人格否定とも言える発言」だと認めた。
その上で、研修初日の冒頭に総務室長が「講師に全委任をしている」と発言したことや、研修に人事課の職員が同席していたことから、西條氏の発言は委託した学院の意向に沿ったものだと判断している。また、原告の残る2人については、2021年3月に労災不支給決定が出ていたが、大阪労働者災害補償保険審査官はこの決定を2022年12月に取り消した。つまり、原告3人全員の労災が認められたのだ。
行政の判断が裁判にどのような影響を及ぼすのかが今後の焦点になっている。
※編集部註:追手門学院大学はプレジデントオンライン編集部の取材に対し、「係争手続きにもとづいて対応しており、回答は差し控えさせていただきます」とコメントしている。