きっかけは個人情報の漏洩だった

「もともと私にハラスメントをした人物は1人だけだったのですが、その被害を相談したことで、最終的には大学から組織ぐるみでハラスメントを受けることになりました。ハラスメントと感じた13件の行為をハラスメント防止委員会に訴えましたが、約1年半が経って大学が認めたのは2件だけです。しかも、被害はいまも続いています」

埼玉大学に非常勤職員として勤務するAさんは、2020年4月からハラスメントに悩まされてきた。きっかけは、上司から自分の個人情報を漏らされたことだ。

個人面談
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Aさんは新年度に入ったタイミングで、諸手当の申請などのために個人情報を更新した。ところが、時間管理員として人事Webシステムにアクセスする権限を与えられていた上司が、Aさんの個人情報にアクセスし、興味を持った部分について少なくとも2名の職員に漏洩した。ここでは内容は伏せるが、上司はAさんの個人情報に対する感想まで述べていた。

上司からのハラスメントと感じる行為は、これだけではなかった。

「労基署に行かないように」

2021年7月にはある職員から、連日の残業や土日の業務を上司に強いられて悩んでいることを打ち明けられ、Aさんはその事実や数々のハラスメント行為を、上司よりも上の所属長に相談した。学内のガイドラインには「まず、同僚や上司、先輩や教員(所属を問わず)等身近な信頼できる人に相談すること」と記されていたからだ。

ところが、所属長はAさんに対し「相談された行為はパワハラとは言えず、コミュニケーション不足が招いたもの」だとして相手にしなかった。しかも、学内で複数の人物に相談したこと自体が「コンプライアンス違反」だと言ったのだ。

所属長はさらにAさんに対して、今後同じ職場で働きにくいだろうから異動を考えてもいいけれども、その際は自分で希望して異動したことにするようにと求めた。その上で「労基署に行かないように」と発言した。