認められたのは被害に遭ってから3年後だった
この事態を受けて、Aさんは埼玉大学教職員組合に相談した。教職員組合も大学側との交渉に乗り出す。その結果、2022年6月に調査のやり直しが決まる。Aさんは「異動要望書」の件も含め、13件のハラスメント被害を訴えた。
ハラスメント防止委員会の審議結果が出たのは、2023年3月30日だった。Aさんを異動させようと画策したことと、「異動要望書」へのサインを職員に求めたことの2件については、「業務上の相当な範囲を超えており『人間関係の切り離し』に当たる」として、パワーハラスメントにあたると判断した。
被害に遭い始めてから約3年、ハラスメント防止委員会に訴えてから約1年半、調査のやり直しから9カ月と長い時間が経過して、ようやく出た結論だった。しかし、最初にAさんが個人情報を漏らされた件を含む他の11件については、ハラスメントとは認められなかった。
「報復行為と言えるような根拠は確認できない」
Aさんは異動に対しても不服申し立てをしていた。その調査は大学の事務局長管轄で行われ、ハラスメント調査と同時に結果が出た。ところが、その内容にAさんは驚く。
Aさんの異動については、「ハラスメントを訴えたことに対しての報復行為と言えるような根拠は確認できませんでした」として、「妥当」と判断した。その上で、「職場で円滑なコミュニケーションが取れていないことについて、今後改善を要する」というAさんへの評価についても「妥当」と回答した。
ハラスメント防止委員会と、事務局長管轄による調査の結論に対して、当然ながらAさんは納得できていない。
「認められなかったハラスメントについても証拠があります。にもかかわらず、このような結論を出したのは、私が非常勤職員という弱い立場であり、訴訟もできないだろうと考えているからではないでしょうか。
『人間関係を切り離した』というハラスメントを認めながら、一方で『コミュニケーションが取れていない』ことを理由とした異動が、妥当であると結論づけたことにも、首を傾げざるをえません。私の人権が無視されている状態です」