ハラスメント認定件数すら非公表

埼玉大学はAさんからのハラスメントの相談はごく一部を認めただけで、相談に対するAさんへの報復と受け止めざるを得ない人事異動や人事評価を容認した。国立大学法人として考えられない姿勢に、Aさんは失望している。

「一連の問題がもみ消されてしまっただけでなく、国立大学として、また教員を養成する教育機関としての倫理観、使命感が失われているのではと危惧しています」

埼玉大学のハラスメント防止委員会は、Aさんに対するハラスメントを認めた結果を公表していない。公表していない理由などについて大学に質問すると、「関係者のプライバシー保護等の観点から、個別の事案に係ることについては回答を差し控えさせています」と何も明らかにしなかった。

また、公表基準について質問したが「ございません」と回答があった。埼玉大学ではハラスメントの年間の認定件数なども一切公表していない。このような状態では、埼玉大学のハラスメント対策が適切に行われているのかどうか、何の検証もできないのではないだろうか。

大学内ハラスメント「相談件数は増加傾向」

大学で起きているハラスメントは、労働問題に取り組んでいる弁護士によると「明らかに相談が増えている傾向にある」という。筆者にも大学関係者からハラスメントの被害に遭ったという情報が多数寄せられている。教職員が上司からハラスメントを受けたケースや、大学院生がハラスメントを受けたケースなどが多く、問題なのは大学内の窓口に相談しても取り合ってもらえないことだ。

さらに、埼玉大学のケースのように、職員や教員が上司によるハラスメントを訴えた場合に、逆に報復のような人事や雇い止めを受ける事案は、他の大学でも実際に起きている。理事からハラスメントを受けたとして窓口に申告しても、「理事のパワハラは一般の教員が申告しても調査しない」と主張する大学も存在する。

また、大学で起きているハラスメントの実態がわからないことも問題だ。国立大学協会では、国立大学のハラスメント相談窓口などの一覧をホームページで公開しているが、各大学の相談件数や認定件数、処分件数などは把握していない。