中古車販売大手ビッグモーターが、保険金の不正請求を繰り返していた問題で7月25日、会見を開いた。会見に登壇した兼重宏行前社長の言動に批判が集まっている。1000人以上の社長・企業幹部の話し方を改善してきたスピーチ&コミュニケーション戦略研究家の岡本純子さんは「話す内容が不適切だったことは言うまでもなく、言葉づかいなど謝罪会見にあるまじきタブーともいえるミスを連発していた」という――。
保険金の不正請求問題を受け、記者会見する中古車販売大手・ビッグモーターの兼重宏行社長=2023年7月25日、東京港区
写真=時事通信フォト
保険金の不正請求問題を受け、記者会見する中古車販売大手・ビッグモーターの兼重宏行前社長=2023年7月25日、東京港区

タブーだらけ「世界最悪会見」はなぜ最悪か

保険金の不正請求が問題になっている中古車販売・買取会社ビッグモーターの経営陣が、7月25日、会見を行いました。これまで一度もメディアの前に顔を見せなかった兼重宏行前社長(71)が登壇し、“謝罪”しましたが、その言動に再び批判が集まる事態となっています。まさに、炎にまきをくべるがごとく「禁忌(タブー)」だらけの謝罪会見の問題点を整理し、改めて掘り下げてみましょう。

そもそも、こうした不正請求がはびこった要因として、特別調査委員会の報告書で指摘されたのが、「経営陣に盲従し忖度そんたくする歪な企業風土」でした。この会見ではその兼重社長の「強すぎるリーダーシップ」が遺憾なく、そして残念な形で発揮されたと言えます。

いわゆる「カリスマ社長」の半端ない「圧迫感」は言葉や態度の端々に表れていました。特に彼が繰り返していたのが「全く」という言葉です。「全く知らなかった」「全くない」……。「天地神明に誓って」といった表現も使っていましたが、一瞬のひるみもなく、言い切る、断定する。これは独裁者が強いリーダーシップを印象付けるテクニックです。

特長的なのは、その語調の厳しさと威圧感でした。「連携しながら! 速やかに! 問題の原因として! 二度と!」「この度は! まことに! 申し訳! ございませんでした!」など、一語一語を区切って発声するので、怒鳴っているように聞こえてしまいます。まるで、「鷹」のような眼光の鋭さからも、この人は日常的にこうして、半端のない「圧」を放ちながら、日々社員とコミュニケーションをとっていたのだろう、と容易に想像できました。

自ら、「理詰めで話をする」と言及していましたが、あの口調で、日々、部下を「ツメ」ていたのではないか、と想像した人は少なくないでしょう。カリスマ経営者らしくざっくばらんで、言葉にエネルギーがあるスタイルは、平常時には、魅力的に映り、ポジティブに受け入れられますが、こうした危機管理時にはあだになります。

よく言えば自然体ですが、それが尊大に見えたり、反省の色がうかがえないように見えたりするわけです。「傲慢ごうまんで、エラそうで、全く謝罪に聞こえない」という危機管理の会見において、最も許されない禁忌を犯してしまいました。

さらに、聞き手の怒りに火をつけたのが、他責的な言葉の数々でした。