地元紙に“隠蔽工作”を図ったとして無給処分

新年早々、とんでもない事実が明るみにでた。昨年12月25日に行われた宮崎県知事選挙で4回目の当選を果たしたばかりの河野俊嗣知事が1月2日に新型コロナウイルスに感染したことを踏まえ、県が地元紙である宮崎日日新聞に対して、その前日の元日の知事の行動について事実を隠蔽いんぺいする工作を図ったというのだ。

自身の行動歴に関する地元紙への情報提供を巡り、一連の経緯と自身の処分について県議会で説明する河野俊嗣宮崎県知事(=2023年1月20日午後、同県庁)
写真=時事通信フォト
自身の行動歴に関する地元紙への情報提供を巡り、一連の経緯と自身の処分について県議会で説明する河野俊嗣宮崎県知事(=2023年1月20日午後、同県庁)

結局この工作は失敗に終わり、知事は謝罪の上、自身の給料を2カ月分全額カットする意向を明らかにしたことでひとまず決着をみた。メディアも事実関係の報道のみで深層の分析を行わないまま一連の事件はもはや過去のものとされつつある。

しかし、本件は、大きく2つの問題をはらんでいる。1つは感染症についての自己中心的思考、そしてもう1つは政治とメディアの関係である。今回の事件はこの2つの問題点を、極めて端的に炙り出したものであると言えることから、本稿ではこれらについて、ひとつずつ丁寧に考えていくこととしたい。

まずは一連の経過を、メディアの報道を基におさらいしておこう。以下は当事者である宮崎日日新聞から1月5日に発せられた記事である。

初詣の翌日、「コロナに感染したので変更したい」

「河野知事行動歴 宮崎県が変更依頼 陽性判明後『初詣削除を』」

河野知事の新型コロナウイルス感染を巡り、県が本紙掲載の「知事の動き」1月1日分について行動履歴を変更するよう依頼した。県は当初、「宮崎市の宮崎神宮、県護国神社に初詣」と記載したメールを送っていたが、陽性判明後、秘書広報課職員が「終日、公舎などで過ごす」への変更を求めた。しかし、本紙は当初のメール通り3日付紙面で掲載。担当職員は「提案は適当ではなかった」としている。

「知事の動き」は、知事の動向可視化のため総合面に毎日掲載している。新聞製作を休んだ1日、初詣の記載が入った同日分のメールを午後9時20分に受信。しかし、担当職員から2日午後5時過ぎに「知事がコロナに感染したので変更したい」との電話があり、同5時24分に「終日、公舎などで過ごす」への変更を求めるメールが届いた。その後、同5時52分にメディア各社に感染を知らせる発表資料が届いた。

報道機関に知事の動向を改竄するよう県が要請したのは論外であることは言うまでもない。この点については前掲した問題点の2つめとして後述するとして、まずは1つめの問題点である「感染症についての自己中心的思考」を考えるにあたって、知事が元日にとった行動について検証していくこととする。