災害対応のパイオニアに足りなかった「嗅覚」

JR西日本はこれまで、大雪による大規模な輸送障害も、台風や地震時の大規模な駅間停車も経験していた。にもかかわらず、これを掛け合わせた事態を想定できなかったというのはなかなか根深いと言わざるを得ない。

現在、原因究明と改善策の検討を進めているというが、降雪の基準を10センチから5センチに変更するなどという小手先の対応では解決しない。基準は最低限やるべきことであり、それだけでは目まぐるしく変わる事態に対応することはできない。

JR西日本にはこの「嗅覚」が足りなかった。融雪器にしても、10センチの積雪はあくまで目安であって、これ以下の予測で使用してはならないという決まりはない。だが燃焼式融雪器の点火には係員を緊急招集する必要があるといい、これも判断を鈍らせた可能性がある。

懐事情の厳しい同社だが、現場社員の削減が進む現状も踏まえれば、少なくとも京都駅のような多数のポイントがある大規模駅には電気式融雪器を導入したほうが良いのではないだろうか。

列車を止める、動かすの違いはあるが、2017年12月11日には、山陽新幹線内を走行中のJR西日本保有N700系車両の台車から異音、異臭が発生したと報告があったにもかかわらず運行を継続し、東海道新幹線名古屋駅で台車に亀裂が発生していたことが判明する重大インシデントが発生している。

楽観主義、縦割り主義、戦力の逐次投入では解決できない

台風時の計画運休のように事前に準備されたオペレーションはつつがなくこなすが、台本のない突発的な事象では、何も起こらないだろうという「楽観主義」、専門部門との連携が不足した「縦割り主義」、小手先の対策を繰り返す「戦力の逐次投入」という、まるで旧日本軍のような失敗が繰り返される。今回も現場から次々と降車避難を求める声があがったが、指揮官は右往左往するばかりで有効な手を打てなかった。

経験工学と言われる鉄道事業においては、過去の数多の失敗と経験の積み重ねで成り立っている。JR西日本は台風や地震と同様、反省をふまえてそれなりに実効性のある改善策を講じるだろう。

だが今回、閉じ込められた乗客にとって被害を受けた「今」がすべてで「次」などない。反省した時点で取り返しがつかないことがあるのは、福知山線脱線事故を起こしたJR西日本が一番分かっているはずだ。

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