東京の鉄道運賃が高いと言える理由
首都圏の鉄道を利用していると急速にバリアフリーが進んでいることを実感する。エレベーターやエスカレーターの設置が進み、お年寄りや障害のある人の鉄道利用もだいぶ容易になった。
また、相互乗り入れも増え、乗り換えが不要になるケースも増えた。例えば、東京メトロ副都心線の開通で西武池袋線・東武東上線方面と東京メトロ、東急東横線、みなとみらい線(横浜高速鉄道)が一本でつながった。
一方で、日本の鉄道運賃で問題となるのは、運賃のバリアだ。
「失われた30年」で日本は物価の安い国という評価が定着してきた。円安もあって海外の旅行者が日本の物価安を口にすることが多い。しかし、それでも彼らの多くが口にするのは、日本の交通運賃の高さだ。
特に地域観光に必需の交通手段と言える鉄道運賃の高さを指摘する旅行者は多い。乗り換えるたびに新たな運賃を取られるという不満が中心だ。
まずはフランスのパリ、韓国のソウルの運賃を見てほしい。東京の運賃がいかに重い負担になっているかが分かる。
フランス・パリは「ゾーン制」を採用
日本人が海外の都市を旅行するときに交通運賃の安さを実感することも多いだろう。パリの鉄道には区間運賃がなく、ゾーン別の共通運賃だ。
しかも、メトロ、路面電車(トラム)、バス、郊外へ行きの電車RER線、国鉄(SNCF)線すべての公共交通がこの共通運賃で利用可能となっている。
1回の移動ごとに購入する切符が1.9ユーロ(約260円)。この切符が10枚セットになったカルネを購入すると14.5ユーロで、1枚当たり1.45ユーロ(約200円)。日本の都市交通の初乗り運賃程度でパリ中心部(メトロ全線とゾーン1のパリ20区すべての交通機関を網羅)を移動できる。一定時間内であれば乗り継ぎもこの切符で可能だ(ただし、メトロ/バス、メトロ/トラム、RER/バス等には制約がある)。
またフリーパスも充実している。このパスを利用すればすべての交通機関が乗り降り自由だ。
パリとその郊外はゾーンで区間が区切られている。パリの中心部をゾーン1とし郊外に向けて放射線状にゾーン1、2、3、4、5というように広がっている。パリ市内はゾーン1、2のフリーパスで移動可能だ。
1日フリーパスは「ゾーン1ー2」が7.5ユーロ(約1050円)だ。1週間用、1カ月用のフリーパスもあり、さらに格安で定期券代わりになる。日本の定期券にあたる1カ月用のフリーパスはゾーン1~5すべて利用できて、75.2ユーロ(約1万520円)だ。