韓国・ソウルも共通運賃制でより安く

韓国・ソウルでは李明博元大統領がソウル市長だった頃、都市交通の大改革を行い、料金制度が一新された。

首都圏電鉄という広域電鉄の概念でソウル首都圏の鉄道事業者が網羅され、韓国鉄道公社・ソウル交通公社・仁川交通公社・空港鉄道等が運営する路線の運賃は、通しで計算される通算運賃制度を導入している。

KORAIL 311000シリーズ(旧 5000シリーズ)EMU(第8バッチ)
KORAIL 311000シリーズ(旧 5000シリーズ)EMU(第8バッチ)(写真=地下鉄06/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

ソウル市内の鉄道、バスの運賃支払いが一元化され、ICカードである「T-money」を利用すると初乗り料金1250ウォン(約130円)で10キロメートルまで乗車でき、バスと地下鉄、あるいはバスとバスの乗り換え等の際にも10キロメートル以内なら追加料金はない。10キロメートルを超えると、5キロメートルごとに100ウォン(約11円)が加算される。

すなわち、鉄道だけでなく、バス等も含めてゾーン制あるいは通算運賃となっているのだ。

これらでは事業者ごとの自立採算制をとらずに運輸連合体を設立し、各社からの事業収入を運輸連合でいったんプールしたうえで一定の基準で参加事業者に再配分する共通運賃制度を導入する施策をとっている。

先述のパリの場合も、パリ運輸組合に地下鉄、バス、フランス国鉄など50社余りが加入しており、乗継割引制度という概念ではなく、ゾーン制の共通運賃だ。

複数の会社路線を利用すれば運賃が跳ね上がる

日本の首都圏を例に取ると、鉄道網はかなり充実しており利便性も高い。一鉄道会社線だけを利用する場合は、北総鉄道、東葉高速鉄道などの一部の高額運賃路線を除けば、安く移動できる場合も多い。

一方で事業者数がかなり多く、それぞれが独立採算で経営しているため、目的地まで複数の事業者路線をまたがって利用すると、それぞれの鉄道会社の初乗り運賃を含む運賃が加算され割高となる。東京でも「フリーパス」の名のキップはあるが、利用範囲は限定的だし、定期券も同様だ。

都内に路線を持つ旅客鉄道会社はいくつあるのだろうか。列記してみよう。

JR東日本、JR東海(新幹線のみ)、東京地下鉄(東京メトロ)、東京都交通局(都営地下鉄等)、東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄、京王電鉄、小田急電鉄、東急電鉄、京浜急行、東京モノレール、ゆりかもめ、東京臨海高速鉄道、多摩都市モノレール、首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)、北総鉄道、埼玉高速鉄道(都内では短距離)。

以上18社もある。首都圏に広げればさらに鉄道会社数は増える。2社間の短い区間同士等では数十円程度の乗継割引運賃制度はあるが、基本、各社の初乗り運賃を含む運賃が単純加算されるから、複数会社線を利用しての移動は高額となる。