韓国発の音楽「Kポップ」はなぜ人気なのか。批評家の佐々木敦さんは「海外で成功しようというモチベーションが高く、歌唱やダンス、ビジュアルのレベルが高い。日本と違って、パフォーマンス中の動画をファンがネットで拡散できることも、世界的な人気につながっている」という――。

※本稿は、佐々木敦『増補・決定版 ニッポンの音楽』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

2019年5月1日、ラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナで開催された2019年ビルボード・ミュージック・アワードで、賞状を持ってプレスルームでポーズをとる韓国のアイドルグループBTS
写真=AFP/時事通信フォト
2019年5月1日、ラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナで開催された2019年ビルボード・ミュージック・アワードで、賞状を持ってプレスルームでポーズをとる韓国のアイドルグループBTS

2022年は「Kポップの当たり年」

今のニッポンの音楽というものを考える時に、どうしても比較対象として登場させざるを得ないのが、Kポップの存在です。実際、近年日本でのKポップ人気はものすごく、一大産業となって久しい(筆者自身が近年、急速にKポップにハマってしまった人間の一人です)。

彼ら・彼女らが「なぜこんなにも人気を博しているか」を検証することは、ニッポンの音楽の未来を考えた時に、非常に有益なことだと思います。

今年2022年は、「Kポップの当たり年」と言われていて、優れた新人アイドルがいくつもいくつも出てきています。そんな中の一つに、Kep1er(ケプラー)というグループがいます。

Kep1er は、「Girls Planet 999(ガールズプラネット999)」という、韓国のサバイバルオーディション番組をきっかけに2022年にデビューした9人のメンバーで構成されるグループです(なお、韓国には、こうした形式の番組が非常に多いです)。

先日、彼女たちが一発撮りのパフォーマンスを収録するネット番組「The First Take」に出たことで、「ただ可愛いだけじゃなくて、歌も超絶上手い」ということが大きな話題になりました。「The First Take」はSony Musicが制作しているので、基本的にはSonyの所属アーティストの出演がメインになります。Kep1erの日本でのリリース元もSony Musicです。

もっとも勝利を収めたIVEもSony

あるいは、彼女たちよりももっと売れているIVE(アイヴ)というグループもいます。彼女たちは、2021年末にデビューしました。2022年もっとも勝利を収めた韓国ガールズグループはどのグループか? と問われれば、今のところIVEということになるだろう、というレベルで人気もクオリティも随一ですが、彼女たちの日本デビュー元も、やはりSony Musicでした。

このように、現在の日本の音楽業界は、Sony Musicの存在感が非常に強い状態になっていて、海外のアーティストが日本デビューしようと思ったら、ファーストチョイスはSony、という判断になることが多くなっています。