将棋は広く人気のあるゲームだが、素人とプロ棋士の間には、当然のことながら大きな差がある。

谷川棋士は中学2年のときにプロデビュー、21歳で史上最年少名人に。羽生善治棋士とは160局以上対決。(PANA=写真)

最大の違いの1つが、「三手先を読む」ことができるかどうか。先日、21歳という史上最年少名人の記録を持つ谷川浩司さんと対談したときにも、その話となった。

誰だって、勝ちたい。そのためには手を深く正確に読むことが必要だが、素人はどうしても都合のいい読みをしてしまうのである。

自分が指す一手目を、最善手とするのは言うまでもない。問題は、相手が指す二手目。ついつい、「こんなふうにきたら都合がいい」と自分勝手な読みをしてしまう。そのため、実際に指して、相手が最善手を選択してくると、読みが違って戸惑ってしまう。

だから、プロの棋士や、アマチュアでも高段者になれば、相手の立場になってベストの手を想像してみようとする。勝ちたいのは、お互い様。自分を倒す側の論理、思考で二手目を読んだうえで、改めて自分の三手目を考える。このような「三手先の読み」ができるかどうかが、上達を左右するのである。

相手の立場になるのは、難しいこと。とりわけ、利害が対立するときに、相手だったらどうするかと読むことは、簡単ではない。それでも、「三手先の読み」に熟練することが本質的に大切なのは、将棋もビジネスも同じである。