夫婦はなぜ、セックスレスになるのか。生殖医療専門医で、日本性科学学会認定セックス・セラピストとしても活動する今井伸さんは「日本にはセックスレスの夫婦がたくさんいますが、男性側の道徳観、倫理観の欠如が原因になっていることも多い。円満な性生活を送っていたはずの仲良し夫婦がある日の夫の言動をきっかけに突然セックスレスに陥った事例があります」という──。(第2回/全2回)

男性が原因の性トラブルを避ける3カ条

僕は現在、泌尿器科、生殖医療の専門医として日々、性機能に悩みを抱えた患者さんたちと向き合っています。診察室にはさまざまな症状や訴えを持つ10代から80代の男性たちがやってきます。

僕が重要なこととしてお話しする内容は、全世代、ほぼ共通しています。大きくまとめると、次の3つです。

①男性器には正しい扱い方がある
②気持ちよく射精できるようになることが重要である
③陰茎を使ううえでは、自他を守るために高い道徳観、倫理観が必須である

これさえ守っておけば、性について取り返しのつかないトラブルは起こりにくくなります。

関係が悪い男女
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「射精道」のすすめ

①と②は、男性器の病気や射精障害、勃起ぼっき障害の予防につながる大切なスキルです。そして、③については、生涯を通して自分やパートナーの心と体を守るために大前提で備えておくべきモラルです。

ところが、これらを知識として仕入れる機会はほぼなく、学校で行われている性教育も十分なモノとは言えない現状があります。

「男は勝手に覚えるもの」と、家庭でも教育現場でも放置されているために、本来は、知識があれば避けられるトラブルを抱えることになった男性が、僕の診察室へ日々やってきます。

そのため、僕は男性のために必要な性知識と行動規範を「射精道」という理念としてまとめ、生涯にわたって健全な性生活を送るための性教育活動を始めました。

性倫理の欠如がセックスレス、セクハラ、性犯罪の遠因に

なかでも昨今、急速に増加しているセックスレスについては、③に挙げた、男性が持つべき性倫理の欠如が大きな影響となって表れていると感じることがあります。

毎日のように報道される著名人のセクハラ問題や、性犯罪のニュースは、その最たるものでしょう。

そこまでの大問題に至らなくても、ごく普通の夫婦や恋人同士の間でも、この性倫理の欠如によって、長年のセックスレスへの引き金を引いてしまうことがあるので要注意です。