なぜマウンティングはなくならないのか。脳科学者の黒川伊保子さんは「女性は群れの中で優位に立ちたいという生殖本能を持っている。女性社会でマウンティングがなくならないのはむしろ自然なことだが、この格付けの連鎖は受け手次第で浄化することができる」という――。

※本稿は、黒川伊保子『女女問題のトリセツ』(SB新書)の一部を再編集したものです。

リビングルームで話す魅力的な日本の女性
写真=iStock.com/itakayuki
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マウンティングの4つのタイプ

マウンティングとは、本来、動物が自分の優位性を表すために、相手に乗りかかり、押さえ込む行動をいう。女女関係においては、「私のほうがあなたよりも幸せである」「裕福である」「頭がいい」「魅力がある」などと、勝手に格付けをして、自分のほうが立場は上であるとアピールすることをいう。

女性は、生殖本能において、群れの中で優位に立つことが、生存可能性を上げる条件なので、マウンティングはごく自然な行動と言える。

マウンティングには、以下のような技がある。

・「○○すべき」などのアドバイスタイプ
・皮肉を言うタイプ
・謙虚なふりして、結局自慢になるタイプ
・ひたすら自慢タイプ

原始の社会では、群れの中で優遇されることこそが、自分と子どもの生存可能性を上げる大事なファクターだったので、女性脳は、自分がより優位であることを示さなければいけないという衝動にかられやすい。

また、女性の仲よしグループは、本来、子育て共同体として形成されるため(学生のそれであっても)、「愚かな女」を置いておくのは危ないので、著しく劣る者は疎外しなければならない。

この2つの本能によって、女性たちは、日々マウントし、マウントされて、生きていく。

ここでは、マウントされた側の対処法を伝授しよう。

アドバイスのふりには感謝と謙虚でやり過ごす

ケース1:アドバイスタイプ

0歳の子を持つママに、「0歳からの英語教育」を勧めるのは、本気のアドバイス。それにしたって、言われたほうはマウントに感じることもある。言われた側が従わないと(しかもその相手を下に見ていると)、その後は、本気のマウンティングに転じることもあって厄介だ。

けど、世の中には、アドバイスのふりしたマウンティングもあるらしい。

「うちは0歳からバイリンガル保育園に通わせてる。0歳からやらないと手遅れだからさぁ。○○ちゃんも急いだほうがいいんじゃない」と5歳の子どものママにマウンティングするケース。

これはもう、「ありがたいアドバイス」のていで、受け止めちゃうのが一番。「ありがとう。本当にいつも気遣ってくれて」と、笑顔で答える。

そのうえで、「でも、うちは、外国語は急がないの。日本語を完成させるのに精いっぱいだから」と言えばいい。

マウティングし返してやりたかったら、「黒川伊保子が、母語に専念するほうが理系力が伸びるって言ってるし。将来困ったら、AIに同時通訳させるからいいわ。ほほほ」と言ってやればいい。けど、そこまで言ったら、宣戦布告。あらゆることで絡んでくるから、お勧めできない。心の中でそうつぶやいて、ストレス解消してね。

アドバイス風味のマウンティングは、向こうの脳の中でも、アドバイスのつもりなのかマウンティングのつもりなのか、けっこう曖昧なので、「ありがたいアドバイス」として受け止めちゃうのが一番。そうすれば、マウンティングが成立しない。

でも、感謝しただけだと、言うことを聞かないときにムカつかれるから、「しない理由」は言ったほうがいい。「うちは、○○で精いっぱいだから」と、謙虚なふりをするのが一番だ。