5割以上を外国人世帯が占める埼玉県川口市の芝園団地では、外国人の生活騒音が日本人住民を悩ませていた。同団地の自治会で事務局長を務める岡崎広樹さんは「外国人は日本と母国の住環境の違いがわからない。『日本の住宅は足音が響きやすい』などと呼びかけたところ生活トラブルの数は減った」という――。

※本稿は、岡崎広樹『外国人集住団地』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

騒音で耳を塞ぐ夫婦
写真=iStock.com/Srdjanns74
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外国人住民を「迷惑な隣人」にさせないための三つの課題

外国人が集住したことによる様々な生活トラブルにより、いつからか芝園団地は様々な問題が山積みした団地として噂になっていた。筆者は2014年に芝園団地に住み始めたのだが、その頃になると団地内の生活トラブルはだいぶ落ち着いていた。とは言え、日本人住民にとっては、まだ生々しい記憶が残っており、中には外国人住民は「迷惑な隣人」であるという先入観を持っている人もいた。

では、外国人住民は日本人住民のことをどう思っていたのか。ある外国人住民は、

「高齢者の日本人と何を話したらいいか分からない」

と言っていた。

彼らの心情を察するに、日本での生活に心配事が尽きなかったであろうことは想像に難くない。家族で異国の地で生活することになった。借りる予定の部屋は知り合いが紹介してくれたところで、収入条件さえクリアすれば借りられる部屋だった。大きな建物だったが住み心地は悪くなさそうだ。外国で働くのは初めてのこと、自分はうまくやれるだろうか。そして、自分の家族はちゃんと外国生活に適応できるだろうか……。

彼らにとって、まずは新しい生活を始めることで精一杯だろう。日本人住民は異国の地の「見知らぬ隣人」でしかなかった。ましてや、相手は高齢者ばかりだ。外国人ならばなおさら何を話題にすればいいのか分からないだろう。

日本人の高齢者と外国人の若者は「見知らぬ隣人」となりやすい。また、隣近所では、お互いの違いが表面化しやすく「迷惑な隣人」にもなりやすい。この状況を改善しない限り、日本人住民と外国人住民との関係づくりは一向に進まない。そう痛感していた。

そこで現状の課題を整理すると、次の3点に絞られた。

[課題1] 生活トラブルの改善
[課題2] 両者の出会いの場づくり
[課題3] 地域活動の拡大方法

筆者はこれまで述べてきたような現状を踏まえたうえで、これら三つの課題に対して取り組みを始めた。その具体的な活動内容を紹介したい。