粗大ごみの出し方や防音マットの購入も外国人にとっては至難

さらに、新規入居者がここでの生活習慣について理解しやすくなる方法を考えた。それが、「芝園ガイド」の配付である。

これは、「芝園かけはしプロジェクト」の学生たちによるアイデアだった。「芝園かけはしプロジェクト」は、2015年から芝園団地で活動している学生ボランティア団体である。学生たちの力を活かして「芝園ガイド」を作成し、UR管理事務所の入居手続き時に配付してもらうことにした。

当時の入居手続きでは、注意書きを配付していた。注意書きはA4サイズ1枚の紙である。その中に、注意事項が中国語で箇条書きされていた。筆者は中国語を読めないが、同じ内容の日本語版には次の記述があった。

「引っ越しする際の粗大ごみ(一辺が概ね40cmを超える大きさのもの)は、必ず市収集課に申し込んでください。そして、公民館または市内コンビニストアで納付券を購入して粗大ごみに必要な枚数を貼ってから粗大ごみ置場に出してください。なお、書いてある受付番号は申し込んだ時の番号と一致しないと回収してもらえませんので、お気を付けください」
「フローリング床は音が響きますので、防音マットなどを敷くなどをお勧めします。なお、ドア、窓の開け閉めや歩く際も、周囲のお住いの方の迷惑にならないよう、静かにお願いします」

中国人住民にとっては初めての注意事項も多いはずで、これをもらっても、

「公民館って何? どこにあるの?」
「防音マットがお勧めと書いてあるけど、防音マットって何? どこで手に入るの?」

と疑問だらけに違いない。注意事項を理解してもらうだけではいけない。それに沿って行動してもらわなければならない。

丁寧すぎるほどの説明とイラストを交えたガイドを配布

そこで、「芝園ガイド」では二つの工夫をした。一つ目は、留意事項の内容をイメージしやすくしたことである。たとえば、筆者は初めて芝園団地を来訪する人に対して、次の道案内をメールで送る。

「当日は、芝園団地自治会の事務所にお越しください。最寄りの蕨駅からいらっしゃる場合の行き方は、次の通りです。蕨駅から芝園団地までは、徒歩約10分です。蕨の改札を出ましたら、左側にお進みください。階段を下りて真っすぐに進みますと交番が見えます。そこは左側に進んで、角のお店のところを右側に曲がります。そして、真っすぐに進み、“ぶぎん通り商店街”にも入らず真っすぐに抜けてください。道なりに進むと、大きなマンション“芝園ハイツ”があるので、そこも真っすぐに進んでください。マンションの下には八百屋があります。マンションの終わりのところも曲がらずに真っすぐ進みます。左側にピザ屋が見えましたら、その右側の広場が芝園団地商店会広場になります。スーパーが御座いますので、その横を真っすぐ抜けると15号棟が御座います。そこの一階に自治会事務所が御座います」

だが、こうした文字情報だけでは分かりにくくて当然である。しかし、地図や目印の写真付きの道案内にすれば、簡単に場所が分かる。そこで、「芝園ガイド」では、イラストを用いながらここでの生活習慣をイメージしやすくしている。