外国人住民は何も日本人を困らせたいわけではない

住民は「迷惑な隣人」に対してはそもそも人間関係を築こうとはせずに、隣近所から早く引っ越してほしいとさえ願うだろう。

2010年頃、日本人住民の外国人住民に対する不満がピークに達すると、地元の市議会議員への働きかけなどが行われて、2011年には、自治会、川口市役所、URや居住者約40人などが参加する住民集会が開催された。

自治会からは、敷地内のUR管理事務所に通訳者の配置を要望した。新規入居者はUR管理事務所で鍵を受け取ってから、自分の部屋に向かう。その機会を活かして、中国語の通訳者から団地生活の留意事項を伝えてほしいとお願いした。2012年には通訳者が管理事務所に配置された。通訳者は入居手続きの時に中国語で生活の留意事項を説明した。敷地内の注意書きには中国語も併記されることが普通になった。

ここで再度強調しておきたいのだが、外国人住民は日本人住民を困らせたいわけではなかった。これは次のような状況に似ていると思う。

筆者は関東育ちであるため、エスカレーターに乗ると左側に立つ。初めて関西のエスカレーターに乗った時、いつもと同じように左側に立ち止まっていた。そうすると、後ろから歩いてきた人が嫌そうに横を通っていく。何か悪いことでもしたのだろうかと思い、周りを見回すと、みんな右側に立っていて、左側は急いでいる人のために空けている。

左側に立っていた筆者は、急いでいる人たちの邪魔になっていた。そこで初めて、関西ではエスカレーターは右側に立つのだということを知ったのである。決して誰かを困らせたくて、左側に立ち止まっていたわけではない。それが、自分にとっての日々の習慣だっただけである。

エスカレーター
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ごみの分別をしたくないのではなく、習慣がないだけ

日本人でさえ、地域による生活習慣の違いはある。ましてや外国人住民には母国との違いがあって当然だ。彼らは日本人住民を困らせたいわけではなく、ごみの分別をしたくないわけでもない。あくまでもごみを分別するという習慣がなく、知らなかっただけなのだ。

それならば、初めて分別する人にも捨てやすい工夫が必要だろう。現在、ごみ捨て場のごみステーションには、日中英の3か国語で書かれた分別用の掲示がある。そこにはイラストが多用されており、捨てていいものが一目で理解しやすくなっている。