「ご家庭の団らんから国際会議まで」を守り続ける

——ちなみに髙山さんはコンビニのスイーツも召し上がりますか。

【髙山】コンビニのスイーツはすばらしいと思います。本当に日本のコンビニはすごいですよ。もちろん私もよく食べています。

逆に、コンビニ各社の方々もSATSUKIのケーキをよく買われていくようです。皆さん研究されているのでしょう。常に進化をさせていこうという飽くなき探究心が、お客さまに新しいおいしさを提供してるのだと思います。研究して技を磨き合うのはお互いさまです。

——あらためて「スーパー」シリーズは富裕層向けの商品ではなく、プレミアムな体験を届けるためのコンテンツだったことがわかりました。

【髙山】「スーパー」、「エクストラスーパー」という名前も、わかりやすくすべての方に届くようにというところからのネーミングです。「もっとおしゃれな名前がいい」といったご意見があることも承知していますが、そこはわかりやすさを大切にしました。

1964年の東京オリンピックのために開業したニューオータニが当時掲げたキャッチコピーは、「ご家庭の団らんから国際会議まで」。つまりフルライン戦略、ターゲットは「全員」だからこそ、かっこよさよりわかりやすさなのです。

ニュー・オータニ執行役員の高山剛和さん
撮影=小野さやか
ニューオータニオープン当初、回転展望レストランには行列ができた。「限られた人が利用する場所」だったホテルを観光名所に変えた象徴的な出来事だという

ニューオータニには「ゲートウェイ」の役割がある

——「スーパー」でとどまってはいけない理由が「デフレ日本」にあったというのも驚きでした。

【髙山】2月まで「愛媛かんきつフェア」として、こだわり品種の「甘平」「せとか」のパフェを提供していました。コロナの影響で飲食店が軒並み苦戦を強いられる中、生産者も窮地に立たされており、愛媛県からご相談をいただいて実現したものです。われわれとしては日本の魅力ある食材を商品化し、ブランド価値を高め、実売につなげていくお手伝いができればと思っています。次にチャレンジしたいのは「紅まどんなのショートケーキ」ですね。

日本は資源も少なく、人口もどんどん減っていく。これは抗いようのない現実です。だとすれば、日本のお役に立つのは民間外交の担い手であるわれわれホテルであり、ニューオータニに来ていただいた方を日本全国に誘う「ゲートウェイ」としての使命があると思っています。

——ケーキの話は日本の未来にまでつながっていたんですね。

【髙山】同僚からはよく「風呂敷を広げすぎ」と言われます(笑)。

コロナ禍になってからは、日本交通さんと一緒に「スイーツデリバリー」サービスをはじめました。「食べに行きたくても行けない」というお客さまの声から生まれたものです。タクシー業界もお客さまがいなくなって本当に苦労されていたので、お客さまからの課題も解決でき、パートナーであるタクシー会社さんもわれわれもうれしい、三方良しの取り組みができています。

だからホテルは面白いんです。なんでもできるんですから。

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