スマホともなれば、無意識的に手が伸びる人もいるのではないでしょうか? スマホはどうにか封印することができても、テレビやパソコンを勉強するたびに片づけるのは現実的ではありません。自宅や自室は、誘惑アイテムが多すぎるのです。

一方、このような誘惑アイテムにあふれた自宅・自室ではなく、それらがいっさいない図書館や自習室だと、持参した教材などと向き合うしかありません。自然と勉強がはかどるのです。

通勤電車は適した場所である

じつはこの原理、通勤電車にも応用できます。

最近は、電車内でほとんどの人がスマホやタブレットをいじっていますが、そういう文明の利器がない時代には、文庫本や新聞を読んでいる人がたくさんいました(居眠りをしている人もたくさんいましたが)。

通勤電車の中では、やれることが限られています。やむを得ず本や新聞に目を通すしかなかったのです。

私は銀行員時代、横浜市港北区にあった銀行の独身寮から、渋谷まで東横線を利用していました。そのころは、朝に日経新聞を読み、夜の帰りは山崎豊子著の文庫本を読むのが日課になっていました。わずか1年少しの期間でしたが、当時刊行されていた山崎豊子さんの文庫本は、帰りの通勤電車の中ですべて読破しました。

おそらく、誘惑アイテムの多い独身寮の自室では読破できなかったでしょう。

このように、ほかのことができない環境は、集中するのに適した環境と言えます。「自宅では集中できない。図書館も自習室も近くにない」という方は、まずはいつもの通勤電車を書斎代わりにしてみてはいかがでしょうか。

新たな習慣をはじめるときは、日々のルーティーンに合わせてプラス方向の習慣を確立することがおススメです。普段テレワークの方であれば難しいですが、通勤している方なら通勤電車はルーティーンでしょうから、すんなりはじめられます。

どんなに満員電車でも、教材を工夫すればなんとかなります。実際に私も、横浜・渋谷間という満員電車の激戦区を乗り切っています。

山崎豊子さんの小説はおもしろかったので、娯楽と指摘されたらそうかもしれませんが、少なくとも日経新聞は違います。ゼロ円で試せることなので、仮にどうしても集中できないようなら、やめればいいだけの話です。

満員電車
写真=iStock.com/ThaiBW
※写真はイメージです

まわりの人たちも集中している環境がいい

図書館や自習室で勉強するとはかどる二つめの理由は、心理学上の「社会的証明の原理」です。「社会的証明の原理」というのは、ざっくり言ってしまえば周囲の人たちの行動を真似るという人間心理です。