先の図書館の書架の例で考えれば、最初に眺めるときは「日本」という背表紙を探して、次にもう一度「物理」という背表紙を探すのと同じです。

現代社会のように、外部からの刺激が増え、脳内に入ってくる情報量が飛躍的に増加すると一つの情報に集中しようとしても、別の邪魔な情報が無数に入ってきてしまいます。

たとえば、本を読んでいるときにスマホの通知音が鳴れば、本に書かれている文字に対する意識が途切れます。通知音に反応してLINEの返信を書いていたら、あなたの意識は完全に本の文字から離れてしまうはずです。

転がった重たい石を、わざわざ止めない

あなたがやらなければならない多くのタスクは、重い石を転がすようなものです。

最初に転がしはじめるときは、一生懸命に力を入れなければなりません。しかし、一度転がりだせば、さほど力を入れなくても、そのまま転がり続けてくれます。

多くのタスクも、これと同様です。着手するときが、もっともパワーを必要とします。たとえば本を読むときでも、イチから読みはじめるときのほうが、ある程度読み進めたものを読み続けるときより、精神的な負担が大きいはずです。

ですから、多くの小説家は、最初の数ページに読者の心をつかむ重要な出来事を入れているのです。

冒頭でつかみそこねると、その後を読んでもらえなくなり、読者から「つまらない本だった」と酷評されてしまうからです。

スマホの通知音は集中の敵である

着手するときの次にパワーを要するのは、中断したタスクを再開するときです。

読書の途中に、スマホの通知音でLINEの着信が来たことを知り、返信してから本に戻ったとしましょう。読みはじめのときほどではないにしろ、活字を追っていた最中より、はるかにパワーが必要となります。

何にも邪魔されず一気に読めたときは、内容もしっかり理解できているし、所要時間も短時間で済みます(もちろん、分量が多い本を何時間もぶっ続けで読むと、疲労が蓄積されることは言うまでもありませんが……)。

中断も1回や2回だけなら、まだなんとかなるかもしれません。でも、中断が複数回にわたって続くようであれば、どんな人でも集中力を保つのは難しいはずです。

あなたがキャリアアップのためにおこなうタスクも、頻繁に邪魔が入ってしまうと、転がっている石をわざわざ止めては、また転がすようなことを繰り返すだけです。極めて非効率的なものになってしまいます。

短時間で効率的にタスクをこなすには、当該タスクの邪魔をする刺激をできる限り排除する必要があります。