評価する言葉を使う上司の罪深さ

【話し合いケース】顧客が求めているもののイメージを話し合う場で

【リーダー】今日は、お客様が再び足を運んでくれるお店とは、どんな店なのか、皆で理想的なイメージを話し合って共有したいと思います。では、誰からいきましょうか。

【Aさん】では、私から。実は私はこの間、地域をいろいろ見て回ったんですね。そこで素敵な店を見つけました。そういうところを、少しベンチマークしていくと……な店がまえをつくることがよいと思います。なぜなら~……。

【リーダー】(Aさんの発言中にかぶせるように)まったくアグリーだね。うん。いいね、いいね。

【Aさん】はい……。で、単にリアル店舗をだすだけではなく、ECと連動させる可能性もあると考えています。

【リーダー】いいところを突いているね。ありがとう。じゃ、次は誰か……。

【Bさん】……ええと、私もAさんの意見と同意見です。あそこの店は素敵ですし、ECと連動すればパワフルかと思います。

【Cさん】私も同感です。

この事例は、上司の「まったくアグリーだね」「いいね」「いいところを突いているね」という言葉によってAさんの発言が「評価された」がゆえに、残りの人々も、それに同調してしまった事例です。こうしたリーダーの発言が、なぜ、部下を萎縮させてしまうかおわかりでしょうか。

会議中
写真=iStock.com/itakayuki
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リーダーが思う正解に誘導している

「まったくアグリーだね」「いいね」「いいところを突いているね」と、リーダーが意見をその都度評価するような一言をはさむことで、いつの間にか、リーダーがメンバーとのフラットな関係を崩しているからです。

権力を握っている側として、「リーダーが思っている正解」に誘導し、他の人の意見を狭めてしまうのです。多くの管理職やリーダーの方々のメンバーとの会話を聞いていると、そこに多くの「評価軸(部下を評価する言葉)」が意図せず含まれていることにすぐに気づかされます。

リーダーが「評価軸」を一方的に発し続けると、「発言者=評価される側」「リーダー=評価する側」というように、「権力の勾配」がいつのまにかできてしまいます。すると、参加メンバーはなんとなく自由な発言がしにくくなり、リーダーが思っている正解を探しはじめたり、支持してしまったりするのです。