※本稿は、小竹海広『言葉のアップデート術』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
コンプレックスを刺激する広告はネットから消されている
2020年8月、ヤフー・ジャパンはいわゆる「コンプレックス広告」の掲載禁止を発表しました。コンプレックス広告とは、「ムダ毛のせいで恋人に振られた」「飲むだけで痩せるサプリ」など、人のコンプレックスを刺激する広告のことです。
原文では「一部の身体的特徴をコンプレックスであるとして表現することは、差別意識を温存、助長するものであり、決して許されるべきものではない」としています。
ネット記事の横にあるバナー広告や、半強制的に流れる動画を目にして、気分を悪くした経験のある私たちにとって朗報でした。
一方で人を勇気づけ、受け手をエンパワーメントする広告が増えていることも事実です。
「あなたは、自分が思うよりも、ずっと美しい。」
そもそもエンパワーメントとは、ブラジルの思想家パウロ・フレイレ氏が提唱したと言われ、「人間が潜在能力を発揮できるように公平な社会を実現しよう」という意味で使用されてきた歴史があります。
2013年にユニリーバが実施した「ダヴ リアルビューティー スケッチ」というキャンペーンが、カンヌの国際広告賞で高く評価されたことで、広告業界にエンパワーメント広告の萌芽が生まれました。そのキャンペーン映像では、FBIで似顔絵を書く捜査官が登場し、2枚のスケッチを描きます。
1枚目は、ある女性が自分の顔を口頭でFBI捜査官に伝えたスケッチ。2枚目は、同じ女性の顔を第三者が見た印象を口頭でFBI捜査官に伝えたスケッチ。
捜査官は、実際の顔を見ずに口頭の印象だけでスケッチを完成させます。その2枚のスケッチを比べると、2枚目のほうが明るく、幸せに満ちた表情をしていたのです。
この映像のラストは「気づいてください。あなたは、自分が思うよりも、ずっと美しい。」というコピーで締めくくられていました。
本稿ではこのような、人をエンパワーメントする言葉を探っていきます。