※本稿は久保山浩気・川崎訓『ブランドカルチャライズ』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
まず押さえておきたいのは「伝統・文化・宗教」
海外の消費者を理解するには、まずは「伝統・文化・宗教」「ライフコース」「世代論」の3つを押さえる必要があります。
1つ目の「伝統・文化・宗教」は、その土地に長く根づくものです。
そのうちの宗教は、日本では普段あまり意識することはありませんが、海外では生活と密接に関わっていることも少なくありません。人々の生活習慣や考え方の基礎になるものとして、ほかの2つにも影響をおよぼしているので、「伝統・文化・宗教」の点はまず大枠をつかみたいところです。
世界的に文化の多様性を重視し、尊重する動きが高まる中、各国の伝統や文化の理解はマーケティングを成功させるだけでなく、致命的な失敗を避ける上でも必須になります。
中国文化の無理解が招いたドルガバの炎上
文化への無理解が生んだ例として、2018年に中国で炎上したのは「ドルガバ」として知られる、イタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナです。
なぜこれほど世界的なブランドが、炎上してしまったのか。
それは上海のファッションショーに先立ち、インスタグラムで公開されたプロモーション動画が原因でした。
その動画は、中国人のモデルが中国の食文化である箸を使い、イタリアの伝統的な料理をどのように食べるかを指南するような内容でした。
しかし、映像で示される箸の使い方は決して上品とは言えず、ナレーションもそのモデルの姿を馬鹿にしているようにも感じられるものでした。これが中国の文化を「侮辱している」と現地で捉えられたのです。
動画が発表されてから中国内外で徐々に批判が高まっていましたが、さらに言い訳が成り立たないような事態が起こってしまいました。ドルガバのデザイナーがSNSで、中国を馬鹿にしたような発言をしていたことが発覚したのです。
それにより、予定されていたファッションショーは中止となり、中国の有名人やモデルがドルガバの不買を宣言。一般消費者も巻き込んだ大騒動に発展し、ドルガバは謝罪コメントを出すに至ったのです。
それでも問題はおさまらず、数日の間にオンラインショッピングの大手プラットフォーム各社がサイトからドルガバを削除し、有名な百貨店でも取り扱いが中止となりました。