ドルガバ側の真意はわかりません。ただ、当時はすでに高級品市場で中国人の購買力は注目されており、ドルガバも中国への投資を行っていました。そのため、中国を侮辱するためにわざわざ動画を作ったとは考えにくいでしょう。
なぜそのような描写を入れたのかはわかりませんが、根本的には文化への無理解があったと考えるのが妥当ではないでしょうか。
そしてこの事例は、決して他人事ではありません。
日本人にとってはごく普通のことでも、海外ではNGという事柄は当たり前のように存在します。ただ伝統や文化を尊重する気持ちを持つだけでなく、意識的に理解を深めていくことが必要なのです。
話題を呼んだ高級化粧品ブランド「SK-II」の動画
一方、その国の文化を深く理解することで話題を生み、消費者に感動を与えるプロモーションを行っているブランドもあります。化粧品SK-IIの中国の事例を見てみます。
SK-IIは、P&Gが展開する高級化粧品ブランドで、本部を日本におき、アジアを中心にグローバルで販売されています。
SK-IIでは、2015年から女性の自分らしい生き方をサポートすることをメッセージに掲げた「Change Destinyキャンペーン」をグローバルで展開しています。日本では東京オリンピックに合わせて公開された、競泳・池江璃花子選手を描いた「センターレーン」(監督:是枝裕和)が話題になりました。
中国でも2016年の春節に合わせて公開された「Marriage Market Takeover」が大きな話題となり、世界的な広告賞であるカンヌライオンズも受賞しています。
中国の「結婚できない売れ残り女」事情
本動画が扱うのは「剩女(シェンニュウ)」、つまり日本語にすると「売れ残り女」の物語です。非常に過激な言葉ですが、一定の年齢(動画内で語られるのは25歳!)を越えても結婚していない女性を指します。
中国では女性は早く結婚して子どもを産むべき、という考えが根強く存在します。
一方、小さい頃から海外の文化に親しみ、よりオープンな考えを持つ若い女性は、自分のキャリアやライフスタイルに重点を置く傾向が強く、親世代との大きな隔たりが生まれています。
ここまでだと、日本にもある世代間のギャップに見えるかもしれません。ですが、中国では結婚しない子どもたちに焦った親同士がお見合いをセッティングしたり、婚活をすすめる婚活マーケットが盛んで、週末の公園で「青空婚活市場」が開かれていたりもします(図版1)。
日本と中国ではその深刻さが異なるのです。