部下からアイデアを引き出すためには、どうすればいいのか。立教大学の中原淳教授は「心理的安全性の確保されたフラットな関係性を築くことが大切になる。そのためには上司は『いいね!』などと評価する言葉を気軽に言ってはいけない」という――。

※本稿は、中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

こちらにサムズアップする上司の男性と目を伏せる部下たち
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会議では年齢や職位を離れてフラットに話すことが大事

対話を行うには、「フラットな関係性」も重要です。

これは、対話に参加しているメンバーに、年齢差や職位の差があってはダメということではありません。現実社会においては、人々の間の権力の差や職位、年齢の差を人為的にフラットにすることはできません。ただ、テーマに向き合って言葉を交わし合う中において、権力や職位をいったん「脇」に置き、お互いの立ち位置を心理的にフラットにすることが大事なのです。

哲学者の中島義道氏は、著書『〈対話〉のない社会』(1997年、PHP研究所)において、「対話とは、素っ裸になって行う格闘技」と述べています。ここで「素っ裸」とはあくまで「メタファー」でしょう。ようするに持っている肩書きや職位を、いったん「脇」に置いて、擬似的に民主的な知的姿勢で対話に向かうことが重要だ、ということになります。

メタファーとして「素っ裸」になるのは、上司も部下も同じです。対話においては、お互いが「素」で向き合い、お互いの意見を表明していくことが重要です。

最近はパワーハラスメントに対する意識が高まっているので、部下に物を言わせなくするために、あからさまに権力を振りかざして圧力をかけるような上司は以前よりは少なくなっているでしょう。

しかし、対話をするときに、上から目線でガツンとやるまではいかなくても、言葉の端々にその上下関係が出てくることはよくあります。とりわけ上司は部下を「評価」する言葉を、対話の中で、意図せずに使ってしまいがちです。例えば、次のような会話の例です。