※本稿は、中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
会議で上司だけがしゃべり続けてしまう理由
会議や打ち合わせの場で、参加メンバーに上下関係があると、上司や先生といった目上の人ばかり話していることがよくあります。「皆さん、ディスカッションしましょう」と言っても、1時間の間、ほとんど上司がしゃべっていた……なんてことも少なくありません。
ただ、目上の人がしゃべりまくるのは、その人が、空気が読めないからとは限りません。むしろ沈黙を恐れ、沈黙になりそうな空気を読んでいるからこそ、発言を続けてしまうこともあります。例えば次のような例です。
【話し合いケース】新たなオフィスのあり方を話し合う場で
リーダー 今日は新たなオフィスのあり方について少し話してみようか。じゃあ、Aさん、どう思う?
Aさん そうですね、ちょっと、どういったらいいかな……(Aさんが考え込むようにして沈黙が続く)
リーダー (沈黙を1秒と待たずに)ごめん、ごめん。ちょっとテーマが抽象的だったかもしれないね。Aさんにはまた後で聞くので、考えておいてくれるかな。じゃ、Bさんはどうだろう?
Bさん 私ですか。そうですね、まずは整理を……(Bさんも言葉に詰まり、沈黙が続く)
リーダー 整理つかないよね。そうだよね。なかなか難しいテーマだよね。例えばだけど、私はこんなことを考えているんだ。例えば、新しいオフィスのあり方として、フリーアドレスオフィスってのは、どうだろう。ノンテリトリアルオフィスなんていう言い方もされるみたいなんだけどね。自由闊達に意見がでるし、創造的にもなれるかもしれない。(しばらく自分の意見を述べる)……というわけなんだけど、Cさんはどうだろう?
Cさん えっ……えーとその……いい案だと思います……(また沈黙)
リーダー ありがとう。あ、そうだ。もう1つ、これについて私の考えを言うと、サテライトオフィスを実現するというのも手だよね……。
以上の例では、リーダーが一方的に話していますが、リーダーは決して「自分が話すことが好き」でこのような状況に陥っているわけではありません。リーダーの中には、話し好きな人もおられますが、そうでない方もいます。
それでは、リーダーは、なぜ、一方的に話してしまうのでしょうか。その理由の1つにあるのは「沈黙への恐怖」と「待つことへの苦手意識」があります。