沈黙を恐れるとメンバーの「考える時間」を奪ってしまう

リーダーの中には、メンバーと会話をしているときに、沈黙が1秒、2秒、3秒と続くと、「コミュニケーションがうまくいっていないような気持ち」になり、焦燥感に駆られる人もいます。そのようなリーダーは、メンバーの中に沈黙が続くと、それに耐えられず、何かを話して「沈黙=間」を自ら埋めようとするのです。そのようなリーダーは、メンバーの中に意見が熟成してくる時間が「待てない」のです。

しかし、本来、リーダーが問いをメンバーに投げかけたときには、メンバーには考える時間(Thinking time:思考時間)が必要です。とりわけ、対話で推奨されるオープン・クエスチョンを投げかけられたときには、メンバーは、問いの意味を解釈し、それに対して自分の意見をまとめなければなりません。

しかし、この「思考時間」がくせ者です。

メンバーにとっては「思考時間」は、文字通り「頭をフル回転させて考えている時間」なのですが、問いを投げかけるリーダーにとっては、それは単なる「沈黙=間」として体感・認識されてしまうことがあります。

そして、この「間」が長く感じられるのです。沈黙は果てしなく続くように感じられます。そして、「体感された沈黙」に恐怖を感じ、ここに焦るのです。

リーダーが「沈黙=間」を埋めてしゃべり続けていると、参加しているメンバーは「リーダーは話したいのかもしれない」と慮って、さらにしゃべらなくなります。このモードに入ってしまうと、リーダーだけがずっとしゃべり続けることになるのです。

【図表1】リーダーが一方的に話してしまう理由
イラスト=『話し合いの作法』より

このような事態を招かないためには、リーダーはメンバーに「思考時間」を保障することと、「間を怖がらないこと」が重要です。多少沈黙が続いても、誰かがしゃべってくれる可能性を信じて、じっと待つことが大切です。待てないリーダーには、対話を生み出すことができません。

年長者は経験が豊富なので話が長くなる

リーダーが恐怖から一方的に話している場合もありますが、もちろん、年を取り、職位があがったリーダーがずっと場を支配して、一方的に話しているパターンもあります。

人は、年齢や職位があがると話が長くなる、とよく言われます。なぜ長くなるかといえば、大きく分けて3つの理由があります。

第一の理由としてあげられるのは、単純に年齢を経て、経験が増えるので、話す素材が増えてくるということです。

年齢を重ね、酸いも甘いも、さまざまな経験をすれば、その経験を他人に語りたくなるのは当然のことです。経験値の少ない若い頃であれば、1つの経験を開示するだけで足りていました。

しかし、年を重ねると、多くの経験を積み重ね、それらを比較したり、引用したりしながら、重層的に主張を行えるようになります。よって、経験が増えれば増えるほど、話す話題を整理しなければ、話が長くなるのは当然です。