チームが当たり前だと思っている前提や価値基準、暗黙のルールなどに違和感や疑問を持ったらどうすればよいのだろうか。東京大学大学院情報学環特任助教である安斎勇樹さんは「まるで素人かのような、素朴な疑問をぶつけることでチームの認識をすり合わせることができる」という――。

※本稿は、安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

チームの認識をすり合わせる「素人質問」

素人質問とは、チームにおいて前提となっている知識や情報に対して、まるで素人かのような、素朴な疑問をぶつけることです。

初心者マーク
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チームのみんなが当たり前だと思っている前提、価値基準、暗黙のルール、業界の常識、専門用語などに対して、ちょっとでも疑問を感じたら、その意味について確認をするのです。「これ、本当にみんなわかっているのかな?」と違和感を感じたら、そこにツッコミをいれていくイメージです。定型文としては、以下のような例が挙げられます。

素人質問の質問パターン

「すみません、これどういう意味ですか?」
「初歩的な質問なのですが、これはどういうことですか?」
「理解不足で申し訳ないのですが、このプロジェクトの目的はなんですか?」

たとえば、リニューアルプロジェクトを進めているヘルスケア領域の消費財メーカーでは、以下のような質問が考えられます。

「すみません、一応確認なのですが、なんでリニューアルが必要なんでしたっけ?」
「初歩的な質問なのですが、そもそも「健康的な美しさ」ってどういうことですか?」
「ところで、どうして研究開発部門とマーケティング部門で協力するんでしたっけ?」
「このプロジェクトって、とにかく目新しいアイデアがでればOKなんですか?」

これらの質問は、下手をすると「お前、話を聞いていたのか」と思われかねない、大前提の確認です。しかしチームに問題が起きているとき、このような「初歩的な大前提」のところで、認識がすり合わされていない場合があります。こうした前提に実は深く納得していないまま「正直、まだ腑に落ちないところがあるけど、誰も質問しないし、きっとみんなわかっているんだろうな……」と、惰性で仕事が進行していくことは、少なくないはずです。この状態を放置すると、チームの現代病をじわじわ引き起こしていきます。

このような暗黙の前提を、率先して確認する。これが、素人質問です。