立場と言い訳を利用して、「AKY」に問いかける

少し前に「AKY」という言葉が流行りました。「空気・読めない」の頭文字を取った「KY」の派生語で、「あえて・空気・読まない」態度を表した俗語です。集団において、周囲の雰囲気や文脈に流されずに逸脱したふるまいをする態度を指しています。「素人質問」という質問のパターンは、AKYを活用した問いかけの戦略と言えるでしょう。

直球で投げると顰蹙ひんしゅくを買いそうな場合は、枕詞に付け加えるお詫びが重要です。

「すみません、一応確認なのですが~」
「当たり前のことを聞くかもしれないのですが~」
「理解不足で、間抜けな質問をするのですが~」

素人質問は、上司や先輩に「そんなことも知らないのか」と諭されて終了、というリスクもあります。けれども、うまく曖昧だった前提を指摘できれば、同じことで内心モヤモヤしていたチームメイトからは「よくぞ質問してくれた!」と、絶賛されることでしょう。リスクをうまく取るためにも「もし、どうしようもないことを聞いていたら、すみません」という言い訳をうまく使うのが賢いやり方です。

素人質問は「自分なりの意見を添える」ことで角が立たない

私自身、クライアントチームのミーティングをファシリテートする場合は、素人質問を多用します。前回の記事で紹介した、「人工知能(AI)を活用した未来のカーナビ」にとらわれていた自動車の周辺機器メーカーのプロジェクトの事例を思い出してください。このときも、勇気を出して「みなさんは、なぜカーナビを作るのですか?」というAKYの素人質問をぶつけたことが、チームの衝動に火をつけるトリガーとなりました。

自分に話している男性
写真=iStock.com/Minerva Studio
※写真はイメージです

これは、私自身が運転免許すら持っていない、自動車に関する本当の「素人」で、かつチームの「第三者」であるからやりやすかった問いかけでもあります。

しかし内部メンバーでも、十分に素人質問を使いこなすことが可能です。

特にチームの若手メンバーや、在籍歴が浅い新参に近いメンバーは、その立場を利用して「素人質問」を投げかけるとよいでしょう。

ただし、わからないことを、自分で考えずになんでもかんでも他人に質問する態度は、人によっては「怠惰なふるまいだ」と捉える人もいます。そこで、以下のように自分なりの意見を添えておくと、角が立たないように素人質問を投げかけられます。

「すみません、一応前提の確認なのですが、このプロジェクトの目標は『とにかく目新しいリニューアルアイデアを出す』という理解であっていますか? いただいた資料を読み込んだのですが、よくわからなくて……」