なぜ「話し合いは苦手」と感じる人が多いのか。立教大学の中原淳教授は「それは『残念な話し合い』をイメージしているからだろう。日本全国では5つの『話し合いに関する病』が発生している」という――。

※本稿は、中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

「残念な話し合い」5つの病

我々が「話し合いとはどういうものか」をイメージする際、それらは「残念な話し合い」ばかりというのが、多くの人々の印象ではないでしょうか。特に、次の5つの「話し合いに関する病」が、日本全国で発生しているように感じます。

①とりあえず、かみついちゃう病
②対話ロマンティシズム病
③みんな違ってみんないい病
④アンケートフォームで意見すいあげちゃう病
⑤誰もついてこない病

以下では、これらの詳細をそれぞれ見ていくことにしましょう。

論破が止まらない「とりあえず、かみついちゃう病」

「とりあえず、かみついちゃう病」というのは「対話のフェイズで、いったん、相手の意見を受容すること」ができず、ただちに「否定」したり、反論したり、最悪の場合には「論破」してしまう症状です。

相手がどんな意見を言っても、「いや、そうじゃなくない?」とか、「ていうかさ、それ、おかしくない?」と否定や反論を繰り返します。相手の意見をいったん飲み込むこと、受容すること、解釈することが、できません。