※本稿は、ビル・ゲイツ『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』(早川書房)の一部を再編集したものです。
コロナで重要なのはほかよりうまく対処した国を見ること
人は過去から学ばない、そう言うのは簡単だ。でもときには学ぶこともある。第3次世界大戦がまだ起こっていないのはなぜか。ひとつには1945年に世界の指導者たちが歴史を見て、不和を解決するにはもっといい方法があると判断したからだ。
そんな気持ちで僕はCOVIDの教訓を見ている。僕らはそこから学び、致命的な病気から自分たちを守るべく、もっといい仕事をしようと決意できる。それどころか、いますぐ計画をつくってそこに資金を投じることが欠かせない。COVIDが過去のニュースになり、切迫感が薄れて、世界の注目がほかに移ったあとでは遅すぎる。
世界のCOVID対応のよかったところと悪かったところがさまざまな報告で示されていて、僕はそこから多くのことを学んだ。それに、ポリオ根絶など国際保健分野の仕事から得た数多くの重要な教訓と、ゲイツ財団の専門家および政府、学界、民間セクターの専門家とともにパンデミックを日々追うなかで得た教訓とをひとつにまとめて検討してもきた。重要なのは、ほかよりうまく対処した国を見ることだ。
ワシントン大学のサイト「世界の疾病負荷」はコロナ分析に最適
おかしいと思われるのはわかっているが、僕のお気に入りのウェブサイトは、世界中の病気や健康問題を追跡したデータを集めたサイトだ。「世界の疾病負荷」という名前で、掲載されている情報は驚くほど細かい(2019年版では、204の国と地域で286の死因および369種類の傷病を追跡している)。人はいくつまで生きるのか、何のせいで病気になるのか、時間の経過とともにそれらがどう変化するのか、こういったことに興味があれば、このサイトがいちばんの情報源だ。一度に何時間でもデータを見ていられる。
このサイトを公開しているのは、僕の地元シアトルのワシントン大学にある保健指標評価研究所(IHME)だ。おそらく名前から想像できるように、IHMEは世界中の健康状況を測定することを専門とする機関である。因果関係を証明しようとするコンピュータ・モデリングにも取り組んでいる。一部の国で患者が増えたり減ったりしている理由を説明できそうなのはどの要因か、今後の見通しはどうなのかを示すモデリングだ。