世界標準とはかけ離れた日本の入国手続き
新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、ここ数年、世界各国で渡航制限が設けられ、隔離措置や各種証明書の提出など、水際対策が強化されていた。
よってギリシャのアテネに住む筆者は、コロナ禍以来、日本に一時帰国することができなかった。長きにわたり、日本の入国時の隔離措置は2週間で、滞在予定の日数を使い果たしてしまうからだ。
2021年の夏ごろから、欧州では規制緩和が進んだが、日本政府は“鎖国”と揶揄されるほど厳しい入国規制を続けていた。やっと今年3月、ワクチン接種完了などの条件によるが、ギリシャからは隔離措置や自宅待機が解除されたので、6月にコロナ禍始まって以来、初の日本への一時帰国を果たした。
その際、入国に必要な書類の準備やアプリの登録がとても大変だった。おそらくこんなにアナログで非効率な手続きをやっている国は日本だけだろう。
特にネックになるのは日本の厚労省が強く推奨する「手書き」のPCR陰性証明だ。日本の入国審査はいつまで世界標準とはかけ離れた手続きを要求するつもりなのだろうか。
EU域外でも自由な行き来ができるように
21年夏よりEU・シェンゲン協定加盟国では、スマホ画面でEUデジタルCOVID証明書(ワクチン接種証明、陰性証明、治癒証明等の情報が登録できる)を提示すれば入国時の隔離も検査もなくなった。
EU域外にも加盟を呼びかけ、アジアや中東、オセアニア(ウクライナ、台湾、韓国、シンガポール、アラブ首長国連邦、イスラエル、ニュージーランド等45カ国)も採用。EU域外でも一部では、相互の出入国がスムーズになっている。
スマホへの登録は至極簡単だし、スマホを持たない人向けには紙に印刷した証明書でも可。
発行は無料、ワクチン接種だけでなく陰性証明や治癒証明(一定期間、免疫があることを証明)もこれひとつで対応できる。何より多くの国で互換性のあるシステムなので、特に乗り継ぎがある際の旅行や出張などの際、非常に便利で優れたシステムだ。
日本はこれに参加していない。不参加の理由を厚労省に問い合わせると、「現状のシステムで十分に運用ができるとの判断があった」(保健局予防接種室接種証明係)との回答だった。
日本が加盟していないので、日本人はギリシャ入国時に72時間以内PCRか24時間以内のラピッドテストの陰性証明書の提示が必要だった。
現在は証明書の提示は解除され、ギリシャやドイツなどの大半のEU諸国やイギリスに入国する際の提示義務は不要になっている。