ヴェトナムは感染力が高い変異株で大きな打撃を受けた

2021年終わり近くのアメリカの超過死亡は、100万人あたり3200人をこえていて、おおむねブラジルやイランと同じくらいだ。一方、カナダは650人ほどで、ロシアは7000人を大きくこえている。

オーストラリア、ヴェトナム、ニュージーランド、韓国といった、超過死亡が最も低い(ほぼゼロかマイナスの)国の多くは、パンデミックの初期に三つのことをしていた。人口のかなりの部分を検査し、陽性者や濃厚接触者を隔離して、入国した可能性のある感染者を発見、追跡、管理する計画を実行していたのだ。

残念ながら、初期の成功を維持するのはときにむずかしい。ヴェトナムではCOVIDのワクチン接種を受けた人が比較的少なかった。ひとつにはワクチンの供給が限られていたからであり、またひとつにはウイルスを抑えるのに国が大きく成功していたため、ワクチンが差し迫って必要と思われなかったからでもある。

それゆえはるかに感染力の強いデルタ株がやってくると、なんらかの免疫を得ていた人が国内に少なかったため、ヴェトナムは大きな打撃を受けた。2021年7月に100万人あたりわずか500人だった超過死亡率は、12月には100万人あたり1500人近くまで上がる。ただし、超過死亡率が上がったあとでも、ヴェトナムの状態はやはりアメリカよりよかった。全体としては、あのような初期対策をとったことで、よりよい結果につながったといえる。

コロナ対応を成功させた国は政府と国民に信頼関係がある

またIHMEのデータからは、COVID対応での国の成功は、政府への国民の信頼度とおおむね相関関係にあることもわかる。これは直感として理解できるだろう。政府を信頼していたら、COVID予防の政府指針に従う可能性も高くなる。

一方、政府への信頼は世論調査で測られる。とりわけ抑圧的な政権のもとで暮らしていたら、見ず知らずの世論調査員に政府についての本音を話すことはおそらくないだろう。それにいずれにせよ、この研究結果はすぐ実行に移せる実際的なアドバイスにはつながりにくい。国民と政府のあいだで信頼を築くには、それ自体を目的とした骨の折れる仕事に長年かけて取り組む必要がある。

うまくいく取り組みを見つけるもうひとつの方法が、問題を反対側から見ることだ。つまり、個々のことを特にうまくやったお手本を見つけて、そのやり方を調べ、ほかでも同じことができるようにする。〈国際保健の手本(Exemplars in Global Health)〉というそれにふさわしい名前のグループがまさにその仕事に取り組んでいて、とても興味深いつながりを見つけている。

たとえばほかがすべて同等なら、保健制度が全般にうまく機能している国はCOVIDに首尾よく対処できる可能性が高かった。訓練された人材がじゅうぶんいて、コミュニティの人たちから信頼され、必要なときに物資が揃っている診療所の強力なネットワークがあれば、新しい病気を撃退するのに有利になる。

ここからわかるのは、すべてのパンデミック予防計画には、何にもまして低・中所得の国が保健制度を向上させる手助けを組みこまなければならないということだ。