しかし最大級の失敗は、アメリカがうまく検査を実施できなかったことだ。検査を受けた人はあまりにも少なく、結果が出るまでの時間も長すぎた。ウイルスに感染しているのにさらに7日間もそれがわからなければ、ほかの人にうつしながら1週間を過ごした可能性がある。個人的にいちばん信じがたい問題は、アメリカ政府が検査能力を最大まで広げなかったことであり、最優先ですぐに結果を出すべき人を見きわめて全検査結果を記録する一元的な方法をつくらなかったことである。

この問題は非常に簡単に回避できたはずだからだ。パンデミックがはじまってすでに2年経ち、オミクロン株が急速に広がるなかでも、症状があるのに検査を受けられない人がたくさんいた。

まともなソフトウェア企業ならできるウェブサイトをつくらなかった

2020年の最初の数カ月の時点で、アメリカにいてCOVIDに感染しているのではと心配していた人はみな、政府のウェブサイトを訪れ、症状とリスク因子(年齢や居住地など)についての質問にいくつか答えることで、検査を受けられる場所を確認できるようになっているべきだった。あるいは検査用品が足りなかったのなら、希望者たちの優先順位が高くないことをそのサイトで判断し、いつ検査を受けられるかを知らせることができたのではないか。

そのサイトは、検査キットが最も効率的に使用されるように、つまり実際に陽性の結果が出る可能性の最も高い人に使用されるようにするだけでなく、検査を受けたがる人があまりにも少ない国内の地域について政府に追加情報も与えられただろう。このデータがあれば、政府はより多くのリソースを投入してそれらの地域で情報を提供し、検査を拡大できたはずだ。

ビル・ゲイツ『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』(早川書房)
ビル・ゲイツ『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』(早川書房)

またそのサイトを利用して、陽性の結果が出たりリスクが高かったりする人にすぐに臨床試験に参加できる資格を与え、重症化したり死亡したりするリスクが最も高い人がワクチン接種を受けられるようにもできただろう。それにパンデミックのとき以外でも、ほかの感染症との闘いでそのサイトは役立ったはずだ。

まともなソフトウェア企業なら、このサイトをすぐにつくることができたはずだが、結局、州や都市は手もとの手段に頼らざるをえず、プロセス全体がカオス状態に陥った。まるで西部劇の世界ワイルド・ウエストだ。

ホワイトハウスやCDCの担当者たちと電話で話し、特に議論が白熱したときのことを憶えているが、この基本的な措置をとるのを拒んでいることに対し、かなり無礼な口をきいてしまった。世界で最も革新的な国で、致命的な病気と闘うにあたって現代のコミュニケーション技術をなぜ使わせようとしなかったのか、いまでも理解できない。

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