戦争の行方が、ウクライナ抜きで語られ始めた

しかし、同日、CNNは、複数の情報源によるものとして、〈米政府関係者はここ数週間、英国や欧州の関係者と定期的に会合を持ち、停戦や交渉による戦争終結のための潜在的な枠組みを話し合っている〉〈ウクライナは、米国が“ウクライナ抜きでウクライナのことは何もしない”と約束したにもかかわらず、これらの議論に直接関与していない〉と報じています。

アメリカは「ウクライナのことはウクライナが決める」と言いながら、戦争の行方がウクライナ抜きで語られ始めたことがわかります。ではアメリカはどのような未来を思い描いているのでしょうか。

6月2日、「ワシントン・ポスト」のコラムニストであるデイヴィッド・イグナチウス氏は、こう指摘しました。

バイデン大統領の最も緊急の課題は、紛争が長引くとコストがかかると心配する一部のヨーロッパの同盟国の間で、慌てて平和を求める動きがでることを抑制することである。ヨーロッパの指導者たちは今週、ロシアの海上石油輸送の禁輸を約束し、ドイツはウクライナに強力な対空防御と戦車を提供することに同意して、落ち着いた。

ウクライナ戦争は、その勢いが激しく揺れ動き、ウクライナの抵抗に対する楽観的な見方から、朝鮮戦争のような長く疲れる作業に近い段階へと移行しつつあるのかもしれない。

イグナチウス氏は、かつてレーガン大統領がゴルバチョフ書記長に向けて「ベルリンの壁を壊しなさい」と演説したときのシナリオを作った1人です。今もホワイトハウスに出入りしていて、アメリカ政府の意向を表明するコラムニストとして、非常に有名な人です。

このイグナチウス氏が言っているのが、バイデン大統領はウクライナにおける長期にわたる限定された戦争を準備しているということです。多くのアメリカ人は、1953年7月の韓国停戦は、勇敢な韓国の同盟者が破れたと思った。しかし、平和条約がいまだ存在していないにもかかわらず、今日、韓国は世界の経済的成功例の一つになっている。つまり、ウクライナが韓国のように栄え、ロシアが北朝鮮のように制裁がかけられたまま孤立した状態に置かれる。アメリカにとっては非常に魅力的な状況です。現時点では、これがバイデン政権の頭の中なのでしょう。

ではロシアはそれを受け入れられるのか。次回は、最近のロシア側の報道を見てみましょう。

(構成=石井謙一郎)
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