バイデン「ウクライナに非現実的な期待を抱かせることを懸念」

このような報道とともに、バイデン政権は発言内容を変えてきています。5月31日、バイデン大統領自身が「ウクライナでアメリカがすること、しないこと」というタイトルで、ニューヨーク・タイムズに寄稿しました。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が語っているように、最終的にこの戦争は「外交によってのみ決定的に終結する」。すべての交渉は、戦場で起きていることに基づいて行われる。われわれが、ウクライナに大量の武器と弾薬を迅速に送ったのは、ウクライナが戦場で戦い、交渉の席で可能な限り強い立場に立てるようにするためだ。

われわれは、NATOとロシアの間で戦争が起きることを望んでいない。私はプーチン氏に賛同しないし、彼の行動は言語道断だと思うが、プーチン氏の失脚を望んではない。

3月に、「(プーチン大統領は)権力の座に留まるべきではない」と批判していたのに比べると、明らかなトーンダウンです。

6月3日、CNNでもこう報じました。

4月、米国の目標はロシアが「失敗」することだと国家安全保障会議報道官は当時述べており、ロイド・オースティン国防長官が宣言したように、長期的にロシア軍を大幅に「弱体化」させることだった。これは、キエフ防衛に成功すれば、戦場でロシアを決定的に破ることができるかもしれないという楽観的な見方を反映したコメントだった。

しかし、ロシアが東部で少しずつ戦果を上げ、ウクライナはますます武器や兵力で劣勢になっているという事実上の膠着状態が戦場で定着しているため、ジョー・バイデン米大統領を含む西側高官は、西側の最新兵器があっても、ウクライナの平和への見通しは最終的には外交にかかっていることを改めて強調している。

6月16日には、このオースティン国防長官の「ロシア軍を弱体化させる」という発言に対して、バイデン氏は「やりすぎだと考えていた」「この発言がウクライナに非現実的な期待を抱かせ、アメリカがロシアと直接衝突する危険性が高まることを懸念し、言葉遣いを抑えるようにオースティン氏、ブリンケン氏に伝えていた」とアメリカのNBCテレビのニュースが報じました

ひび割れた壁にペイントされた星条旗とロシア国旗
写真=iStock.com/donfiore
※写真はイメージです

ロシアとの交渉内容は「何でもあり」

これまでバイデン政権が主張してきた「ウクライナの勝利を確信している」という言葉や「ロシアを弱体化させる」という言葉はは鳴りを潜め、その代わりに「外交による紛争の終結」「停戦」という言葉が目立つようになっているのです。

6月3日の「ワシントン・ポスト」でバイデン氏はこう述べています。

【記者】和平を達成するためにウクライナは領土を諦めなくてはならないか。

【バイデン】私は当初から、ウクライナに関しては同国が参加することなくして、何かを決めることはできないと繰り返し述べています。あそこはウクライナの人々の土地です。私は彼らに何かしろとは言えません。ただし、いずれかの時点で紛争は交渉によって解決されなければなりません。そこに何が含まれるかについては、私はわかりません。

要するに、今後の交渉でどういう内容が入ってくるかについては、何でもありですよということです。随分と軟化しています。