オリンパスとともに“一大経済スキャンダル”となっているのが、大王製紙の井川意高前会長による連結子会社からの巨額の資金借り入れである。
大王製紙には国内連結子会社が35社あって、うちダイオーペーパーコンバーティングなどの7社から井川前会長は、2010年5月から翌年9月にかけて合計26回もの借り入れを行っていた。その総額は106億8000万円に達する。
このうち47億5000万円が11年7月までに返済されているものの、うち29億4300万円は、連結子会社の株式および井川家のファミリー企業と考えられる「エリエール総業」の株式で返済されている。貸主の連結子会社が株式を購入し、その購入代金を貸付残金の返済に充てる格好である。
ここで問題になるのが、その株式が関連子会社の未上場株だった、ということだ。
いうまでもないが、上場企業の株式と違って、未上場株式は市場での売買を通した株価が付いていない。そこで実際の取引では時価評価が必要なのだが、果たして返済に充てられた株式の時価評価は妥当だったのか。
未上場株の評価には、上場している同業他社の株価を参考にする「類似業種比準方式」、配当額から算出する「配当還元方式」などがあるが、今回は「時価純資産方式」が採用されている。会社が持つ現預金、売掛金、在庫、設備、土地などの資産の時価評価額を合計し、株数で割って株価を算出する方式である。
その中でも問題なのが土地の評価だ。公的な評価額として各市町村が税金の計算に使う「固定資産税評価額」などがあるが、実勢価格と乖離していることが多い。そこで不動産鑑定士による評価を依頼するわけだが、近隣の土地の取引価格を参考にしたりするなど、鑑定士の匙加減で評価額は大きく変わってくるのが実情である。
どんな資産家でも30億円近い借金を、ぽんとキャッシュで返せるものではなく、未上場株の価格を実際より高く評価して返済したのではという疑問が浮かんでくる。今回の一連の問題に関する特別調査委員会の報告書では、「返済方法及び金額が妥当であるかどうかは検討する余地がある」とされている。