不退転の決意で消費税増税を推進する民主党政権。議員定数削減による歳出カットなども行うとしているが、「まずは無駄を削れ」というのが国民感情だろう。

国には、歳出の無駄や不正経理を検査する会計検査院がある。その会計検査院は憲法90条に規定された憲法上の独立機関で、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」と規定されている。

つまり、企業会計を監査法人が監査するのと同じように、会計検査院が国の決算を監査しているわけだ。この会計検査院を廃止しようとしたら憲法改正が必要となり、それだけ重要な役割を担う機関であるのだ。

2005年には会計検査院法が改正され、物品や工事の請負業者だけではなくコンピュータシステム開発などのサービス業務の委託業者にも検査対象を広げたり、検査を受ける各省庁に資料の提出や事情聴取に応じることを義務付けるといった権限の強化が図られている。

しかし、会計検査に従事する調査官自身、同じ国家公務員であったり、重要なポストに各省庁出身者が座ったりすることで、「お手盛り検査になっているのではないか」という穿った見方がつきまとってきたのも事実。

そこでというのではないだろうが、09年度に公認会計士や企業の経理などを担当してきた民間人9人を採用して「特別検査チーム」を組ませ、自由に案件を選ばせながら検査を行わせてきた。その結果、このチームは10年度決算までに計10件、総額約173億円にのぼる税金の無駄遣いを指摘した。

その中には特許事務の一部を外部委託していた独立行政法人が委託費を二重取りされていて、約2700万円もの税金が無駄になっていたケースがあった。これを発見したのは、メーカーで技術職を務め、特許出願の経験があった調査官だったという。

いまいる調査官の数は約970人。年間の人件費が一人500万円とすれば、特別検査チームのメンバー以外の約960人の調査官の人件費は総額48億円に上る。10年度に指摘した無駄遣いは約4283億円で、人件費に対する倍数は89.2倍となる。一人当たりの指摘額は4億4614万円の計算だ。