「耐えるべきことは耐える」と戦時下経済さながら
2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻。英国政府は各国に先立ち、ロシアへの制裁措置を打ち出し、その波は一気に世界中を駆け巡った。しかし、その制裁が回りまわって、英国民のサイフを脅かす事態となっている。庶民は「物価高が起ころうが、ウクライナ国民が受けている災難を思えば何のことはない」、「プーチンを叩きのめすまでは耐えるべきことは耐える」と、英国社会は“戦時下経済”さながらだ。
侵攻後、最初の週末となった2月27日には、多くの人々がロンドン市内にある在英ロシア大使館前に集結。多くの人々が侵攻中止を訴えた。
大使館前では、プラカードや横断幕だけでなく、路上に反戦のスローガンを書く者まで現れたという。本来取り締まるべき警察官も、反戦の落書きは見て見ぬ振りという状況だ。もはや、公衆のルールなどは二の次で、プーチン大統領を叩きのめすまでは細かいことにはあれこれ言わないという方針のようだ。
“非EU”を生かして制裁を矢継ぎ早に実施
英政府はプーチン政権に近い120の企業や個人を対象に、資産凍結や渡航禁止のほか、ロシアの軍事産業も制裁対象とした。これとほぼ同時にロシア国営アエロフロート航空の英国領空通過の拒否も決めている。ロシアが侵攻したその日に制裁措置を発表するという異例の対応は、いわゆるブレグジット、欧州連合(EU)から脱退したことで加盟各国との調整なしに推し進められた、という一面もある。
こうした制裁はやがて、国際的な金融機関決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)からの締め出し、そしてEU全域と米国、カナダへのロシア機乗り入れ禁止へとつながった。航空機の上空通過不許可をめぐっては、EUや米・カナダ機がロシア領空を飛べなくなるという“全面報復”も起きた。