答えが出るまで帰ってくるな

花王社長 尾崎元規
おざき・もとき●1949年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。72年花王石鹸(現花王)入社。マーケティング統括部長、ハウスホールド事業本部長、取締役執行役員などを経て2004年より現職。朝シャンブームの仕かけ人としても知られる。

好むと好まざるとにかかわらず、これからの日本は海外からもっと人を受け入れて一緒に仕事をする環境になってくるし、日本から飛び出して仕事をする機会も格段に増えてきます。

国内市場の少子高齢化が進み、またアメリカ中心だった世界経済が変わりつつあるなかで、“人口”に依存する我々のようなビジネスは、アジアやBRICsなど、大きな成長が見込まれる市場に積極的にかかわらざるをえません。

研究開発力やマーケティング力、販売力など、花王の強みは国境を越えても通用していくものだと思っています。しかし、我々が主力としているコンシューマープロダクトは日々の生活に立脚した、毎日使う低価格商品です。その国の歴史や風土、気質などの基本知識のうえに、今生活している人々のインサイトの情報、つまり商品の使用現場や購入現場で何を考え、どう感じているかということを深く理解しなければ、喜んで使っていただけるモノづくりはできないのです。

よきモノづくりを海外にも展開するためには、言語的なスキルばかりではなく、現地の実情に合わせてリサーチしたり、現地の人々をうまくマネジメントする力、昔風に言えば「国際感覚」が必要になってくる。

本当に求められるグローバルな人材とは、日本で実践してきたことをそのまま持ち込むのではなく、その本質を踏まえながら、消費者起点の現場主義をどこの国に行っても実践できる人のことだと思います。

今、アジアで展開して好評を博しているのが「Attack Easy」という手洗い用洗剤です。タイやインドネシアなどでは洗濯機用の洗剤よりも、濃縮タイプではない在来型の安価な手洗い洗剤の市場のほうが大きいということで、私が事業部長時代に日本からマーケッターや研究者を現地に送り込んで開発した商品です。