「戦略」とは現状の枠組みを変えることだ
2009年5月、ソニーは、テレビ事業本部とオーディオ・ビデオ事業本部、デジタルイメージング事業本部を改編し、新たな事業本部を新設すると発表した。ソニーは2005年にもカンパニー制度を廃止し、大きな組織変更を行っている。相次ぐ組織改編は、組織が機能不全を起こしている証左と言えよう。
今、日本の電機メーカーは、軒並み収益性の低下に悩まされている。原因は何か。アルフレッド・チャンドラーの理論に基づき、業績不振の要因を「組織」の観点から明らかにしてみたい。
最初にチャンドラーの理論を整理しておこう。彼の最大の業績である著作が、『Strategy and Structure(経営戦略と組織)』だ。経営学の本としてタイトルにstrategy(戦略)という言葉が入った、世界で最初の本である。この中でチャンドラーは、米国大企業の比較研究を通じ、「組織は戦略に従う」という有名な命題を打ち出した。
この本は、出だしが圧巻だ。administrators(管理者)、strategy(戦略)、structure(組織)といった基本的な用語が実に丁寧に解説されているのだ。
この本によれば、「管理」とは足下の問題を解決すること。管理の枢要は効率を上げることであり、突発事態や異常への対応が鍵になる。これに対し「戦略」とは、会社の将来の健全性を確保するためのものであり、それを保証するために現状の枠組みを変えることである。現状の枠組みを変えるためには、経営資源の再配分が必要だと説いている。