2020年夏、市川さん(80代)は自宅で亡くなった。市川さんは75歳の時に「大腸がん」と診断され、「余命3カ月」と告知された。しかし、それから7年7カ月、主に自宅で闘病生活を送った。最期まで支えつづけた同い年の妻が、介護の日々を振り返る――。(第9回)
市川さんの妻。ご主人が亡くなり、「ネイルをする余裕が出てきた」と話す。
市川さんの妻。ご主人が亡くなり、「ネイルをする余裕が出てきた」と話す。

「何とかご主人を言いくるめて、連れてきなさい」

始まりはトイレの便器に、血のような色が残っていることに気づいたことだという。

「主人に聞いてみると、『痔』だと言うんです。健康そのもので生きてきた人だから、病気を疑わなかったみたい」と、妻。