介護保険創設と同時に「ケアマネージャー」に
ケアマネージャーの吉野清美さんは20代の頃、看護師として病院に勤めていた。
消化器内科へ配属となり、助からない患者が治療に苦しむ様子や、壮絶な最期を目の当たりにしてきた。多くのがん末期の患者が「家で過ごしたい」と言う。それなら「家に帰してあげたい」と思い、吉野さんは在宅を支える訪問看護ステーションに転職した。さらに2000年、介護保険創設とともにケアマネージャーの資格を受験し、合格する。
在宅に関わる職種として訪問医、訪問看護師のほか、食事や入浴などの生活支援を行うホームヘルパー、そしてケアマネージャーがいる。ケアマネージャーは「要介護認定を受けた人」に必要なことを見極め、医療従事者をつなぎ、各種介護サービスも利用できるように患者(利用者)の全般的な支援を行うのが仕事だ。
「訪問看護師の場合は週何回、何時間訪問と、要介護度などに応じて定められますが、ケアマネージャーは利用者さんと月決め契約し、支援を行います。ですから業務範囲も人によってさまざまで、仕事も無制限に増えやすいですが、私は看護師よりもケアマネージャーのほうがフリーで動けて楽しいと感じました。お医者さんや看護師さん、ヘルパーさんは利用者さんと“治療やケア、家事をしながら”話しますが、私は目と目を合わせて話を聞くのが仕事です。“困った時の雑用係”ともいえますが(笑)、雑務のなかから見えてくるものがあるんですよ」(吉野さん)
47歳の時、突然、道端で倒れた
たとえば、
(床がゴミで埋まっているのにダスキンのモップを毎月交換しているのは、この人に会いたいからなんだな……)
(これがこの人の大切な物なんだ)
(寂しいからヤクルトの配達を頼んでいるんだな)
などということが日常生活から見えてくるのだという。
さまざまな利用者と関わり、ケアマネージャーとしてのキャリアを10年以上積んだ頃、吉野さんはある日突然、道端で倒れた。今から7年前の年末、47歳の時のことだった。
「貧血性のショックでした。あとから検査で、正常値の半分くらいのヘモグロビン濃度(貧血の目安となる値)であることがわかりました」