ほどなくチャールズは、シーガルが買い物のたびに豆の缶詰を買うことに気づいた。こうして新たな情報を集めつつ、その後も数週間、同じことを繰り返した。

そしてついに、いつものようにあとを追って食料品店に入ったあと、チャールズはシーガルに声をかけ、自己紹介をした。シーガルが豆の缶詰に手を伸ばすと、その横の缶に自分も手を伸ばし、きっかけをつくったのである。そしてシーガルのほうを向き、「こんにちは。私はチャールズ、FBI捜査官です」と名乗った。

シーガルは笑みを浮かべ、「そう思っていましたよ」と応じた。こうして穏やかな出会いをはたした二人はその後、親睦を深めていった。そしてとうとうシーガルは、このFBIの友人に力を貸し、定期的に機密情報を提供することに同意したのである。

握手を交わす2人
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「人に好かれる公式」を構成する4つの要素

この例では、シーガルを口説き落とすまでに数カ月をかけた。シーガルをスパイとしてスカウトするにあたり、慎重に作戦を練りあげ、それを実施したのである。

シーガルを味方につけるためにチャールズが踏んだステップは、あなたが人と―短期であろうと長期であろうと―親密な関係を築くうえでも役に立つものだ。

この「シーガル作戦」の例を見ながら、チャールズが〈人に好かれる公式〉を活用し、信頼を獲得していった段階を説明していこう。

〈人に好かれる公式〉は「近接」「頻度」「持続期間」「強度」という四つの要素で構成されている。

近接+頻度+持続期間+強度=人物の好感度

「近接」とは、相手との距離感である。「シーガル作戦」では、チャールズはただツカツカと相手に近づいていき、自己紹介をしたわけではない。そんな真似をしたら、シーガルは即座にその場から立ち去っていただろう。チャールズはもっと慎重な方法をとり、自分の存在にシーガルが「慣れる」よう時間をかけた。

あらゆる交友関係において、「近接」は欠くことのできない要素だ。そばにいる回数が増えれば、相手はあなたのことを好きになりやすいし、互いに引かれあうようになる。たとえ言葉をかわさなくても、近くにいるだけで互いに共感を覚えるようになるのだ。