新型コロナウイルスのワクチンの副反応には大きな個人差がある。これにはどんな意味があるのか。国立国際医療研究センター(NCGM)の満屋裕明研究所長は「接種後の発熱や痛みとワクチンの効果には関係がないことが分かっている。ワクチンを接種しても1000人に5人は効果がでないが、これは人類の歴史と関係している」という――。(第2回)

※本稿は、国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

Covid-19ワクチン
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感染後に抗体ができる人とできない人がいる

人間や動物がウイルスに感染すると、中和抗体が作られます。どんなウイルス感染症でもそれは同じです。しかし、中和抗体の働きはウイルス感染症の種類によって異なります。

たとえばエイズにかかったときにも中和抗体は作られますが、その活性は弱く、エイズウイルスは中和抗体をかいくぐる形で増殖を続けます。だからいったん感染すると、今では治療が進んで非常に高い効果が得られるようになっていますが、治療を受けないと自然になおることはありませんし、ほぼすべての感染者がエイズを発症して生命が奪われます。

では新型コロナはどうでしょうか。

一度かかって回復した人は、高い中和活性を得られるのかどうか。結論から言えば、高い活性を得られる人もいます。そうした人たちの中和抗体を使って、感染症の治療を行なうこともできます。これは回復者血漿療法という治療法で、NCGMでは新型コロナの治療法としてその研究を進めています。

新型コロナの回復者血漿療法については、すでに動物実験で高い効果が示されました。中和活性が高い回復者の血漿を新型コロナに感染させたハムスターに投与しますと、ウイルスによる肺の破壊(重症肺炎)を阻止できることがわかっています。同じくマウスを使った実験では、回復者血漿によって肺のウイルス量が1300分の1に減少しました。100万個のウイルスが約770個まで減ったわけです。

このように、新型コロナにかかって回復した人の中には、ウイルスの増殖を抑え込むのに十分な中和活性を得ている人たちがいます。しかし一方で、中和活性がほとんど得られない人もいて、そうした人たちは新型コロナからせっかく回復しても、再び感染してしまう恐れがあると考えられます。この問題の解決策の一つは、ワクチンの接種です。