なぜ新型コロナの新規感染者数は激減したのか。医師の大和田潔氏は「専門家はワクチン接種や自粛の成果を強調するが、説明になっていない。もし次の波が来たとしても、重症者が増えないようなら普段通りの生活を続けたほうがいい」という――。
新聞の見出しには外出自粛の文字
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なぜ新規感染者数は激減したのか

日本の新規陽性者数の激減が世界中で注目されています。たとえばアメリカのニュース雑誌『TIME』のオンライン版では「Japan's Plummeting COVID-19 Cases Create Mysterious Success Story」(日本の急減した新型コロナ陽性者が示すミステリアスなサクセスストーリー)として紹介されています(注1)

なぜ陽性者が激減したのか。私は、臨床医としてその理由をずっと考えてきましたが、ひとまずの結論としては、今後も日本では大流行は起きないのではないかと予想しています。そして、コロナの激減は日本の「地の利」ではないかと思っています。

幻の第1波と、各国で異なるコロナ被害

2019年夏ごろ、中国でPCR機器が大量に発注されコロナウイルス肺炎(COVID-19)が流行したことが推察されています(注2)。そのころ、中国の人々は大量にインバウンドで来日されていました。2020年1月や2月には、日本のマスクを大量買いする中国旅行者の姿も報道されています。

2019年末に日本国内に入り込み始めていたとすると、日本に「新型」コロナウイルスが上陸して既に2年が経過することになります。2019年末の上陸時はPCRが行われていなかったため認識されていませんが、私は「幻の第1波」があったのではないかと思っています。

このコラムでも時折触れてきましたが、日本のコロナウイルスの被害は世界的にみると軽微でした。そして、高齢者と持病リスクの高い人々に集中する特徴をもっていました。老若男女の感染した人々がバタバタと倒れるやまいではありませんでした。

世界では、特に西洋諸国では被害が大きく日本とは異なる様相を呈していました。2020年夏ごろにはそれが明白になっていました。その後もその傾向は変わることなく続きました。

世界保健機関の「WHO Coronavirus(COVID-19)Dashboard」を見ると、国や地域で大きく偏りがあることがわかります(注3)