※本稿は、国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
後遺症が完治するのかもまだ分かっていない
新型コロナの流行が始まってから一年半が過ぎた今、標準的な治療によって一定の成果が出ています。新たな治療法・治療薬の開発は世界中で進められていて、さらにワクチンもどんどん普及しています。しかし、収束の目途はまだ立っていません。
日本では現在も、80代・90代の感染者の約10%が亡くなっています。世界全体の致死率は約1~2%で、この数字だけを見ても、感染症の死亡率としてはかなりの高さです。それだけ病原性の強い感染症が世界中に広がっているわけですから、今回の感染拡大はスペイン風邪以来の100年に一度の危機です。そして、その危機はまだ去っていません。
もう一つ、後遺症の問題もあります。「体がだるい」「息苦しい」「胸が痛い」といった症状の他、脱毛、嗅覚や味覚の障害、咳、頭痛などの症状が回復後に出た人は、感染者全体の約20%もいます。これまでの報告から、後遺症は時間の経過とともに消えていく傾向が示されています。
感染から2カ月の時点で症状が残っている人、4カ月の時点で症状が残っている人、という形で見ていくと、後遺症がある人は減っていくのです。しかし、全員が完全によくなるかというと、それはまだわかりません。
「若者にとってコロナはただの風邪」は本当か
たとえば、嗅覚障害がずっと続いている人も中にはいます。後遺症についてはもう少し長期的に見ていかないと実態を掴めませんが、確かなのは、若い人たちにも後遺症のリスクがあるということです。
「若者にとってはコロナはただの風邪だ」などと言う人もいますが、新型コロナは誰にとっても「かかってはいけない病気」です。その意味でも、やはり従来どおりの感染対策をおろそかにできません。
外出をなるべく控える。外出先の屋内ではマスクをつける。三密(密閉空間・密接・密着)を避ける。人との距離をとる。こまめに手洗いや手指消毒をする。こうした話にはもうウンザリしている人も多いでしょうが、日々油断せずに対策を続けていけば、確実にリスクを減らせます。