変異株の感染力が増すのは「スパイク蛋白」の変容が原因
新型コロナのPCR検査の場合、感染者が陽性と判定される確率はおおむね70%とされています。つまり、100人の感染者がいたときは30人が陰性と判定されてしまうのです。
こうした見逃しの他に、入国したときにはまだ発症していない人がPCR検査を受けたケースで、ウイルスが検出されないことがあります。結果として海外から変異株が持ち込まれてしまい、さらに市中感染が広がっているわけです。
変異株の感染力が増すのは、ウイルスの「スパイク蛋白」が変容するためです。スパイク蛋白というのはウイルスの周囲にある突起のことで、この突起がヒトの細胞とくっつくと、ウイルスは細胞内に侵入します。問題となっている4種の変異株は、その「くっつきやすさ」が強化されているため、感染力が増していると考えられているのです。
いままで通りの感染症予防が変異株対策にもなる
もう一つ懸念されているのは、「ワクチンの効果が低下するのではないか」ということです。ワクチンを接種すると、体内に抗体が作られます。抗体は新型コロナウイルスを攻撃し、無力化します。その具体的なプロセスはミクロの世界の出来事なので、説明がいささか難しいのですが、ざっくり言うとこういうことです。
ウイルスの表面にあるスパイク蛋白と抗体が結合すると、ウイルスは細胞内に侵入できず、感染は起こりません。しかし、変異によってスパイク蛋白の形が変わると、抗体と結合しにくくなります(図表1)。
つまり、感染のリスクが高くなります。すでにワクチンを打った人、あるいはすでに新型コロナに感染した人は、体内に抗体を持っていますが、その抗体が変異株を抑えてくれるかどうか、今はまだ十分なデータがありません。そのためにワクチンの有効性の低下、再感染のリスクが懸念されているわけです。
とはいえ、私たち一人ひとりがやるべきことは、どのような変異株に対しても同じです。外出を控え、外出先の屋内ではマスクを着用する。三密を避け、こまめに手洗いをする。こうした対策を続けていくことは「変異株対策」でもあるのです。