中国の軍事戦略・能力でも習近平政権の本気度が分かる

中国は現在、台湾有事に備え、アメリカの軍事介入を阻止する「A2AD(接近阻止・領域拒否)」と呼ばれる軍事戦略・能力を推し進めている。A2ADとは「Anti Access(A2、接近阻止)」「Area Denial(AD、領域拒否)」を指す。

中国は日本の伊豆諸島からグアムに至るいわゆる「第2列島線」の内側でアメリカ軍の軍事行動を阻止し、南西諸島とフィリピンを結ぶ中国に近い「第1列島線」の内側へのアメリカ軍の進入を食い止める作戦を立てている。

台湾はこの第1列島線の内側に置かれる。地政学的かつ軍事戦略的な観点からの重要なポイント、つまり東・南シナ海の守りと太平洋への進出を狙っている。このために中国は台湾を支配下に組み入れたいのである。

台湾海峡付近の地図
写真=iStock.com/Juanmonino
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中国はA2AD戦略をフル活動し、台湾周辺の空域と海域へのアメリカ軍の進行を妨害し、軍事的主導権を握ろうとたくらんでいる。

たとえば、中国大陸の沿岸から1500キロ~4000キロ圏を射程に入れた「米空母キラー」、「グアム米軍基地キラー」の弾道ミサイルの配備である。さらに今後は高度に技術開発された無人機による敵機・敵艦の探知、誘導、攻撃の3つの要素がA2AD戦略の要となる。

こうした中国の軍事戦略・能力を見ても習近平政権の本気度が分かる。

台湾有事ともなれば、日本も平時ではなくなる

一方、アメリカ軍は中国のA2AD戦略に対応するため、グアムや沖縄などの基地への部隊配置や軍事戦略を見直している。

具体的にはアメリカ海兵隊が昨年3月に発表した「2030年の戦力設計」によると、戦力の分散化と無人機の徹底活用を掲げ、南西諸島海域への中国の進出に対し、沖縄の基地などに海兵沿岸連隊の部隊を置く。

対無人機作戦としては、無人機の周波数を識別。妨害電波を発信し、通信を遮断して中国軍の無人機を無力化する。空母の耐久性を高めて攻撃にも備えている。

中国の習近平政権が台湾に侵攻して台湾有事ともなれば、日本も平時ではなくなる。

戦場となる台湾から日本最西端の沖縄県の南西諸島・与那国島までは110キロと極めて近い。しかも中国が台湾に侵攻する場合、事前に沖縄の島々を軍事的に占領し、軍事行動の拠点にする危険性が以前から指摘されてきた。

このため、日本は中国軍の侵攻に備え、沖縄の防衛力の強化と整備を進めている。防衛省は2022年度に沖縄県の石垣島に陸上自衛隊の地対艦・地対空ミサイル部隊を配備し、与那国島には2023年を目途に電子戦部隊を配備する計画だ。